携帯電話大手3社が激しい競争を繰り広げるiPhone商戦。今年は中古端末業者が固唾をのんで見守っていた。というのも、総務省が中古端末市場の活性化を狙い、2017年1月に策定した「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」で、“iPhoneシフト”を盛り込んだからだ。

 ところが、蓋を開けてみれば、もくろみが外れたばかりか、大手3社が新たに投入した「取り替えプログラム」で状況はむしろ悪化しそうな気配。中古端末業者からは悲鳴の声が上がっている。

下取り価格は大して下がらず

 冒頭のiPhoneシフトとは、iPhone新版の実質負担額が、なぜか旧版の下取り価格より安い状況を是正する取り組みのことだ。総務省は上記指針で大手3社に対し、「端末の調達費用、ならびに下取り価格に照らし合わせた合理的な額の負担をユーザーに求めるべき」とした。合理的な額の負担とは「2年前の同型機種の下取り価格以上」である。

 これにより、iPhone新版の実質負担額が上がる、または旧版の下取り価格が下がることを期待できる。米アップルは大手3社に最大限の端末購入補助を求めると考えれば、後者が濃厚とみられていた。

 大手3社が下取りした端末は海外に転売され、国内に流通しないことが多い。大手3社の下取り価格が下がれば、それ以上の価格を提示する国内の中古端末業者による買い取りが増え、中古端末市場の活性化につながると総務省は考えていた。さらに同指針で「解約時に原則、端末のSIMロックを解除する」ことを決め、中古端末業者が買い取りやすくする環境も整えた。

 だが、iPhone 8/8 Plusは販売価格の上昇で実質負担額が高くなり、この影響で下取り価格もあまり下がらなかった。総務省のもくろみは肩透かしで終わったような格好だ。

 中古端末業者によると、下取り価格の高さが目立つのが、NTTドコモだ。同社はiPhone 8/8 Plusの実質負担額がそもそも高く、総務省の指針を順守しているわけだが、中古端末業者には不当に高く映る。2年前の同型機種(6s/6s Plus)だけでなく、「6」(中古端末業者による買い取りは1万2000円程度)や「5s」(同6000円程度)も高いという。

大手3社のiPhone 8/8 Plusの実質負担額(2017年10月4日時点)
大手3社のiPhone 8/8 Plusの実質負担額(2017年10月4日時点)
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大手3社のiPhoneの下取り価格(2017年10月4日時点、指定機種の購入を条件に適用)
大手3社のiPhoneの下取り価格(2017年10月4日時点、指定機種の購入を条件に適用)
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 一方、ソフトバンクはiPhone新版の実質負担額(新規/MNP)と2年前の同型機種(6s/6s Plus)の下取り価格を同じに設定し、ぎりぎりのラインで攻めてきた。

 このほか、1年前の同型機種(7/7 Plus)に至っては、大手3社とも総じて下取り価格が高い(ただ、KDDIとソフトバンクのMNPについては別の還元との兼ね合いで低めとなっている)。