携帯電話大手3社がiPhone商戦に合わせて新たに打ち出した施策は、MVNO(仮想移動体通信事業者)が手掛ける格安スマホ対抗も兼ねている。大手3社が相次ぎ投入した、最新のiPhoneを最大で半額程度とする「取り替えプログラム」のような施策は、規模の小さなMVNOにはとてもまねできないものだ。

 大手3社はこれまでも、ソフトバンクの「Y!mobile」に代表されるサブブランド戦略をはじめ、端末購入補助を適用しない代わりに毎月の通信料金を安くした「分離プラン」の提供などで対抗策を強化してきた。今回でガードはさらに固まり、格安スマホはいよいよ正念場を迎えることになりそうだ。

 2017年9月26日には、MVNOの契約数で3位の楽天(楽天モバイル)が同5位のプラスワン・マーケティングのMVNO事業(FREETEL)を買収すると発表した。ここにきて「勝ち組」と「負け組」が鮮明になってきており、早くも再編の兆しが出てきた。

攻めの姿勢が目立つ「楽天モバイル」。2017年9月には新料金プラン「スーパーホーダイ」を投入した
攻めの姿勢が目立つ「楽天モバイル」。2017年9月には新料金プラン「スーパーホーダイ」を投入した
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ハイからローまで厳しくガード

 今年のiPhone商戦を占ううえで重要なポイントは端末価格が高いことだ。Apple Storeの価格を例に挙げると、iPhone 8は7万8800円~、iPhone 8 Plusは8万9800円~、iPhone Xに至っては11万2800円~となっている。高くなったからこそ、大手3社の端末購入補助のありがたみが増す。iPhoneのヘビーユーザーには冒頭の「取り替えプログラム」も大きな威力を発揮しそうだ。

 もちろん、iPhoneが高くなったからこそ、ミドルレンジやローエンドのAndroid端末を中心に扱うMVNOにとっては移行を促す好機とも言える。ただ、ここでも大手3社が大きく立ちはだかる。

 大手3社は当然、ミドルレンジやローエンドのAndroid端末をそろえ、NTTドコモ(一部の機種に限定)やKDDI(iPhoneを含め、機種の限定なし)では毎月の通信料金が安い分離プランを適用できる。型落ちで構わないからとにかくiPhoneを安く利用したいユーザーであれば、ソフトバンクの「Y!mobile」やKDDIグループの「UQ mobile」も有力候補。両社は2017年10月から「iPhone 6s」の取り扱いも始める。

 このため、「端末の買い替えを検討するユーザーの目線がMVNOまで行き届くかどうかは疑問」(情報通信総合研究所の岸田重行上席主任研究員)、「ハイエンドだけでなく、分離プランやY!mobileでミドルレンジ以下の端末も大手3社に奪われるため、格安スマホが正念場を迎えるのは必至」(業界関係者)といった指摘が出ている。