毎年恒例となったiPhone商戦。iPhoneはスマートフォンの国内出荷台数シェアで5割強を占める人気端末とあって、携帯電話大手3社は新版の登場に合わせて様々な施策を打ち出してくる。今年も激しい攻防が繰り広げられたが、例年と異なるのは完全な後追いではなく、「追わない」あるいは「追っても微妙に変える」という判断が見られたことだ。大手3社の横並びが崩れつつある。

総務省が取り換えプログラムを問題視

 口火を切ったのはソフトバンク。「半額サポート for iPhone」で最新のiPhoneを最大半額とした。KDDI(au)がAndroid端末向けに提供していた「アップグレードプログラム EX」を意識したもので、端末購入補助(月月割)を提供するだけでなく、プログラム料も不要として差を付けた。

ソフトバンクの「半額サポート for iPhone」の概要
ソフトバンクの「半額サポート for iPhone」の概要
出所:ソフトバンク
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ソフトバンクの「半額サポート for iPhone」の特徴
ソフトバンクの「半額サポート for iPhone」の特徴
出所:ソフトバンク
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 すると、KDDI(au)は「アップグレードプログラム EX(a)」を追加投入して対抗してきた。24回払いによる端末購入を条件に、分割支払金を最大12カ月分、免除するものだ。2017年12月31日までに加入すれば月390円のプログラム料も無料とする。これには、ソフトバンクも「1年買い替えオプション」で追随した。

KDDI(au)は「アップグレードプログラム EX」と「アップグレードプログラム EX(a)」の両方を用意
KDDI(au)は「アップグレードプログラム EX」と「アップグレードプログラム EX(a)」の両方を用意
出所:KDDI
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 こうしたソフトバンクやKDDIの取り換えプログラムに対し、NTTドコモはやや不思議な形で追随した。iPhone 8/8 Plusを購入して13カ月目以降に次の最新機種を購入すると最大4万円分のポイントを還元する「機種変更応援プログラムプラス」を投入したのだ。

 やや不思議とした理由は、後出しにもかかわらず、KDDIやソフトバンクに比べて縛りが弱いことにある。KDDIやソフトバンクは旧機種の回収に加え、プログラムの継続を条件としているが、NTTドコモは旧機種の回収だけにとどめた。プログラムの継続は任意としており、単純に費用の持ち出しが増えるだけのように見える。

 実は、総務省で取り替えプログラムを問題視する声が出ている。端末購入補助関連の「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」はクリアしたが、消費者保護の観点で物言いが付いた。「現行の取り替えプログラムは、一度入ると抜けられない“蟻地獄”。その旨の説明が販売現場で徹底されておらず、1年後や2年後にトラブルの多発につながるおそれがある」(関係者)と見ている。総務省は現在、対応を検討しており、KDDIとソフトバンクは縛りの弱いNTTドコモ方式への見直しを余儀なくされる可能性がある。