通信各社は5Gを巡り、様々な業種と連携して新たな業務用途を掘り起こそうと取り組んでいる。これらが狙い通り順調に広がると、個人のスマホ利用が主体だった4Gまでとは桁違いの経済効果が見込める。その金額はざっと50兆円に達する可能性がある。

 総務省は「電波政策2020懇談会」の参考資料で、日本国内の5Gの経済効果が試算している。製造や交通、医療など10種類の産業別に算出した。

 最も大きいのが交通分野。渋滞や交通事故の低減、自動運転の普及による運転時間の有効活用などを合わせて21兆円の経済効果を見込む。

図●5Gによる経済効果の試算
図●5Gによる経済効果の試算
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 製造業・オフィス関連では、IoTやビッグデータの活用促進により工場業務の効率化、事務機器の保守サポートの削減などが進み、13兆4000億円の効果が得られるとする。医療分野では、IoTを活用して疾病リスクを見える化し発症を予防するサービスが立ち上がるほか、生活習慣病が減少し医療費が1兆円程度抑制されるとして、合わせて5兆5000億円程度の経済効果を見込んでいる。

 これらを含む各分野の経済効果を足し合わせると46兆8000億円となる。ここに含まれていないエンターテインメント業界なども加えれば、50兆円に手が届く可能性もありそうだ。

世界全体では12兆ドルとも

 NTTドコモの吉澤和弘社長は日経コンピュータのインタビューで5Gの経済効果に触れ、自社とパートナー企業の増収分を合わせて「10兆円まではなかなか自信がないが、数兆円規模の効果は出るだろう」との見通しを示している。同社は「+d戦略」と呼ぶパートナー企業との積極協業路線を進めており、パートナー企業を1000社規模に拡充したいとしている。その延長で5Gの業務利用を幅広く開拓し「5G経済圏」を開花させる意向だ。

 世界規模では、英調査会社IHSマークイットが「5Gの経済効果は2035年までに最大で12兆3000億ドルに上る。2020~2035年に世界のGDPを3兆ドル押し上げ、2035年には5G関連のバリューチェーンで2200万人の雇用が創出されているだろう」との試算を公表している。

 これらの試算は5G関連ビジネスが順調に立ち上がるのが前提となっている。実現は各業界の取り組みの成否にかかっている。