日本で5Gの商用サービスは3年後の2020年に始まる。NTTドコモとKDDIが2020年中の開始を表明しているほか、ソフトバンクも「2020年ごろを目指す」としている。携帯大手3社や総務省などの関係者は、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックを5Gの実力と活用方法を広くアピールする絶好の舞台と捉える。一般消費者やユーザー企業は少なくとも首都圏でサービスを利用できそうだ。

低遅延化などIoT対応は2022年以降

 2020年時点に5Gの目標性能を全て実現できるわけではない。規格を段階的に発展させていくからだ。

図●5Gの導入方法とスケジュール
図●5Gの導入方法とスケジュール
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 5Gの規格作りは2つの方式の組み合わせる方針で進めている。第1の方式が現行の4G(LTE)を改良した互換性重視の「eLTE」(enhanced LTE)だ。

 eLTE方式は4Gと同じ周波数帯を使う。ソフトウエア更新などで4Gの基地局を活用できるほか、対応端末も4G技術の延長で開発が可能だ。ただし高速化は4Gの数倍にとどまる見通しで、大幅な低遅延化も難しい。

 第2の方式は4Gと互換性がない「NR(New Radio)」。マッシブMIMOなど最新技術を取り込めるほか、4.5ギガヘルツ帯や28ギガヘルツ帯など高い周波数を使うことが特徴だ。電波の届く範囲が狭い「スモールセル」の基地局が必要だが、広い帯域幅を使えるため大幅に高速化しやすい。一部では4Gと同じ周波数帯も使う。

 NRは2段階で規格化を進める。最初のフェーズ1で実現するのは大幅な高速化、フェーズ2では遅延時間の短縮や接続端末数の増加などだ。

 2020年に導入されるのは、eLTEとNRのフェーズ1になりそうだ。NTTドコモは「当初からNRの基地局も整備し、5Gにふさわしい性能を実現させる」(5G推進室の中村武宏室長)と意欲を見せる。一方、NRのフェーズ2は2022年以降の導入になる見通し。低遅延を生かした遠隔操作や多数のIoT機器を制御する使い方は先になる。