第5世代移動通信システム(5G)の利用者が体感できる実効速度は、現行の4G(LTE)の100倍に当たる毎秒数百メガ~数ギガビット。携帯最大手のNTTドコモはそう想定する。通信条件の良いピーク時の実効速度は、サービス開始当初は毎秒数ギガビットにとどまるが、その後毎秒10ギガビット以上へと段階的に速まりそうだ。

図●現行の4G(LTE)と5Gの仕様や用途の違い
図●現行の4G(LTE)と5Gの仕様や用途の違い
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 毎秒10ギガビットを実現できると、1つの基地局に接続した数百人のユーザーが同時に4K映像を快適に視聴できる。基地局をうまく配備すれば、五輪会場やコンサート会場など利用者が密集する環境でも通信しやすくなる。

 なお国際電気通信連合(ITU)の技術性能要件では、5Gの最高伝送速度を下り毎秒20ギガビット/上り毎秒10ギガビットとしている。

 強みはスピードだけではない。IoT(インターネット・オブ・シングズ)向けに多数のセンサーを同時接続しやすくもなる。同時接続端末数は4Gの100倍となる1平方キロメートルのエリア当たり最大100万台を目指す。縦横各1m間隔でセンサーや端末をびっしり並べても5Gの標準的な基地局で通信をほぼカバーできる計算だ。

 「高速」と「多数同時接続」を両立するには、基地局と基幹回線をつなぐ「バックホール」回線の大容量化も必要だ。通信業界では2020年代の通信トラフィックは2010年に比べ1000倍以上に達すると予測されている。このため、5Gの通信容量は4Gの1000倍を目指す。

 遅延時間の短さも5Gの特徴だ。自動運転や遠隔手術などでの活用を想定。遅延時間は4Gの10分の1に当たる1ミリ秒を目指す。

 性能を高めるために、利用する周波数帯域を大幅に広げる。4Gで使っている700メガ~3.5ギガヘルツの周波数帯に加え、4Gより高い周波数帯を新たに確保。高い周波数帯は減衰しやすいため、主にカバー範囲の狭い「スモールセル」で使う。

複数の技術を組み合わせ仕様実現

 携帯各社は周波数帯域の拡大に加えて複数の新技術を導入し、電波の利用効率を高める。具体的には1台の端末で異なる複数の周波数帯を使え、複数の基地局と同時接続できる「ファントムセル」、基地局のアンテナ素子を数百個まで増やして端末に向けて鋭く強い電波を発射する「マッシブMIMO」と「ビームフォーミング」、サブキャリアと呼ばれる搬送波の帯域幅を広げて伝送間隔の時間を縮めるといったフレーム構成の見直しなどを検討中だ。