Q.部下から急な長期休暇の申請がありました。業務上、休まれると困るのですが、断れるでしょうか?

 このような質問を労務相談や管理職研修で受けることがあります。この場合、「無理だ!」「断る」といった返答は間違いです。

 会社や上司は有給休暇の申請を拒否する権利があると誤解している場合が多いのですが、拒否権はありません。せいぜい「取得日を変えてほしい」と言える程度です。取得日の変更を求めるこの権利を「時季変更権」と呼びます。

 ただし、時季変更権の行使のハードルは高いことを認識すべきです。事業の正常な運営を妨げるような以下の場合に限って使用できます。

・メンバーの大半が休む場合(代替要員がいなくなり、客先や取引先対応ができない場合)
・あらかじめ指定した社員研修や特別な業務を命じた日と重なる場合
・労働基準監督署や税務の調査の日と重なる場合

 こういったケースでは、時季変更権が使えるでしょう。組織の規模にもよりますが、課長・係長クラスが困る程度では時季変更権は使えません。部クラスで代替要員を出せないような問題になって初めてトラブル事案と認められ、権利を行使できます。

 もっとも、日ごろの良好なコミュニケーションがあれば有休取得をめぐって紛糾するのはまれでしょう。協力を求めたら他のメンバーが応じてくれるはずです。メンバーの多くは迷惑がかかる時期を避ける、もしくは前もって周りや上司に了解してもらっていると思います。

 ところが、非常識なメンバーも中にはいます。この場合はどうすればよいのでしょうか。

 会社によってルールが違うので、まずは就業規則などを確認してください。その際のポイントは以下の通りです。

・有給休暇の取得は、いつ(例:1週間前)までに届け出ると記載されているか
・1週間(休日を含む)以上の長期休暇取得の場合は、いつ(例.1カ月前)までに届け出ると記載されているか
・長期休暇の場合は、業務を引き継ぐ必要があると記載されているか
・事業の正常な運営を妨げる場合は、取得日を変更することがあると記載されているか

 現実には本人を含めた家族の病気や急用などで休む場合もあるので、欠勤扱いにせずに有給休暇を認める措置もあります。ただし基本的には自社のルールに沿って、上司は部下を指導することになります。休暇を認めるか否かでメンバーと衝突するのではなく、業務の引き継ぎを含めてルールに基づいて指導すればよいわけです。

 そのためにも、会社は有給休暇の申請期限や業務引き継ぎの義務といったルールを明確にしておくべきです。