社員が机に張り付いてばかりいては、顧客ニーズはつかめない。オフィスワークの生産性を高め、どんどん外に出て行き、新製品を創造できる機会と時間を生み出そう──。こんな目標を掲げて、資生堂は2016年から働き方改革を推進している。2016年1月、自宅などでPC作業ができるように在宅勤務制度を始めた。

在宅勤務をする資生堂の社員
在宅勤務をする資生堂の社員
(出所:資生堂)
[画像のクリックで拡大表示]

 オフィスでPC作業をしていると、上司や同僚から話しかけられたり、電話応対に忙しくなったりして、作業を中断せざるを得ない場面が出てくる。在宅勤務ならそうした中断がなく、PC作業に集中できるので、生産性が向上することを期待して導入した。

利用の低迷を2つの施策で巻き返す

 しかし在宅勤務制度が発足してから最初の10カ月間の利用者は、約150人にとどまった。そこで資生堂の人事部門は2016年夏、巻き返しを図った。経営陣に在宅勤務が生産性向上に役立つことをアピールしたり、事業部門のトップに協力要請に動いたりした。経営陣には2016年8月ごろから、経営会議で根拠となるデータを示しながら、在宅勤務などを通して社員の生産性を向上させる必要性を強調。経営課題として取り組む合意を取りつけた。

 この段階で資生堂はまた、ユニークな行動に出た。働き方改革の本気度を現場の社員に改めて認識してもらうため、各事業部門のトップに自部門で取り組む働き方改革の実践内容をコミットしてもらったのだ。「年次有給休暇の取得を促進する」「労働時間をここまで削減する」といった宣言内容は全て、イントラネットで全社公開した。