デジタル変革の流れは構想段階から実践段階へとシフトしている。「今何を始めるべきか」が、今後の競争力を大きく左右する。そして取り組むべき観点は大きく4つある。デジタルの力でビジネスを変革していく「デジタルトランスフォーメーション」、既存ITインフラの変革を図る「ITトランスフォーメーション」、デジタル時代にふさわしい働き方を目指す「ワークフォーストランスフォーメーション」、IoT(Internet of Things)を見据えたセキュリティを考える「セキュリティトランスフォーメーション」だ。

デジタル変革のキーワードはスピードと最先端アナリティクス

 デジタルトランスフォーメーションの牽引役は、デジタルディスラプターと言われるデジタル先進企業である。SNS大手のフェイスブックは従来のIT企業をはるかに上回る時価総額を持ち、電気自動車で躍進するテスラモーターズも米国の大手自動車メーカーをしのぐ市場価値を獲得している。

 躍進の源泉となっているのが、圧倒的な市場投入スピードと最先端アナリティクスだ。大規模ECサイトを展開する米アマゾン・ドット・コムは11秒に1回、新しいコードをマーケットに投入していくという。映像ストリーミング配信のネットフリックスは1日に4000億件以上の視聴動向を分析し、視聴者の好みに合った映像をレコメンドする。その精度は7割以上だという。タクシー配車アプリの米ウーバー・テクノロジーズは走行情報を基に配車計画を策定し、民泊マッチングの米エアビーアンドビーは最も予約率が高くなる価格設定が可能なシステムを実現している。

 既存の大手企業も黙ってはいない。デジタル先進企業の挑戦を受け、大胆な変革に取り組む企業が増えている。

 従来のビジネスモデルを大転換し、ソフトウエアカンパニーになると宣言した米GEの取り組みは有名だ。銀行免許を持ったテクノロジー企業を目指す金融機関もある。こちらに共通するのがソフトウエアを変革のエンジンとしていることだ。重厚長大なインフラを脱却してクラウドの活用に舵を切り、スピードと俊敏性を重視したアプリケーション開発手法に転換を図り、最先端のデータアナリティクスを推進する。

自らが変わりデジタル変革をリードする

 新旧企業の変革は大きなうねりとなりつつある。それに応えるには、ITベンダー自身も変わらなければいけない。そこで昨年9月に米デルの企業群と米EMCの企業群が1つになり、新たにDell Technologiesという企業体を発足した。グループシナジーを発揮し、PCやサーバー、ストレージ、ネットワークやゲートウエイ製品、クラウドインフラを支えるデータセンター製品群、デジタル変革や自動化を促進するソフトウエア群などをEnd to Endで提供する。R&D投資を長期に継続するため、株式も非公開にした。

 Dell Technologiesグループの中でデジタル変革の旗手とも言える存在が、Pivotal(ピボタル)という会社だ。多くのスタートアップ企業のソフトウエア開発環境の作り込みを手掛けた経験と知見を生かし、既存の大手企業のデジタル変革を支援する。そしてソリューションの提供にとどまらず、デジタル人材の育成までサポートする。全世界主要都市に拠点を構える「Pivotal Labs」には総勢600人を超えるアジャイル開発エンジニアが在籍し、その指導のもとスキルの習得を図る。すでにワールドワイドで1000社以上の採用実績がある。

 GEとは航空機エンジンビジネスのイノベーションに取り組んだ。航空機エンジンにスマートセンサーを取り付け、地上レーダーでは検知できない天候脅威への対応を実現。氷の粒子を検出し、自動的に除去する仕組みを構築した。高い高度での安全性の向上に加え、燃費節減によるコスト低減も可能になった。

 シティバンクとは開発拠点を集約し、開発環境をクラウドベースに移行するプロジェクトを推進した。同時にデジタル人材の育成を支援し、事業部門のニーズを即座にITに反映する組織体制の変革も断行。サービスリリースのリードタイムを57%削減することに成功した。

 日本企業の変革にも貢献している。その1社がYahoo! JAPANだ。開発スピード10倍を目指す同社はPivotalのクラウドプラットフォームを導入し、エンジニアが100%開発に集中できる環境を整えた。

 今回取り上げたPivotalの活動は、当グループが提供する価値の一部にすぎない。私たちの最大の強みはインフラからソフトウエア、ミドルウエアまでEnd to Endで提供できることにある。変革の中核となるデジタルトランスフォーメーションとITトランスフォーメーションに加え、ワークフォーストランスフォーメーション、セキュリティトランスフォーメーションまで、幅広い視野で企業の変革をサポートできる。この強みを生かして日本企業とのパートナーシップを拡大し、“日本発”のイノベーションに貢献していきたい。