私が社長に就任し、「日本を幸せにするクラウドカンパニーへ」という思いを込めた「VISION 2020」を掲げてから3年が経過した。このビジョンには2つの柱がある。1つが、2020年までにクラウドで「No.1カンパニー」になること。もう1つが、最も賞賛されるクラウドカンパニーになることだ。

クラウドサービスの提供で全ての人の生産性向上に貢献

 オラクル本社では、2017年5月期のクラウド分野の売上高が5000億円近くに達している。日本オラクルも売上高・利益ともに過去最高を継続しており、なかでもクラウド分野の売り上げは約2倍に成長している。日本でのクラウドのお客様は1000社を突破した。

 日本オラクルでは、17年6月から始まった新年度をクラウドビジネスにおける「第2幕」と位置付けている。6月5日には、独オラクルのクラウド・トランスフォーメーションに大きく貢献したフランク・オーバーマイヤーがCEO(最高経営責任者)に就任した。

 日本では少子高齢化が進み、労働人口の急減が大きな問題となっている。なかでも、IT人材は、2017年の時点で22万人近く不足している状況だ。2030年には約60万人もの人材不足に陥ると推測されている。デジタル・トランスフォーメーションが急速に進む現在、IT人材不足は社会的な課題になっているといっても過言ではない。

 デジタル・トランスフォーメーションの進展に伴って、伝統的なビジネスが破壊される「デジタル・ディスラプション」が起こる。しかし、オラクルではデジタル・テクノロジーの力で既存のビジネスを成長させる「デジタル・エイド」を提唱しており、クラウドをはじめとして、誰にでも使いやすいテクノロジーを提供し、全ての人の生産性を向上できると考えている。

 世の中へのテクノロジーの伝搬速度は、インターネットによって加速している。1876年に登場した電話は、5000万人に普及するまでに75年を要した。ラジオは38年、テレビは13年だった。

 そしてインターネットは、その登場から5000万人への普及までに4年。クラウドを基盤としたゲーム「ポケモンGO」は、わずか7日間で6500万人のユーザーを獲得した。インターネットやクラウドを活用するインパクトの大きさを象徴する出来事だ。まさに、デジタル・エイドによる爆発的な普及加速効果だと位置付けられる。

クラウド化を支援するためにさまざまなソリューションを提供

 しかし、企業の情報システムに目を向けると、まだオンプレミス(社内運用)が主流だ。2017年の市場規模は、オンプレミスが14兆円。これに対しクラウドはSaaSが約1700億円、PaaSが約1000億円、IaaSが約2100億円で、パブリッククラウドを合計しても約5000億円の市場規模しかない。パブリッククラウドの市場は倍増しているものの、オンプレミスの既存システムのクラウド移行に時間がかかっているのだ。

 オラクルでは、俊敏でコストを削減でき、使い易く、安心・安全な「POCO=The Power Of Cloud by Oracle」を掲げ、お客様のクラウド化を強力に支援したいと考えている。既存資産そのままでのクラウド移行はもちろん、クラウド化に伴うモダナイゼーションや、ビッグデータ分析、IoT(Internet of Things)などの新しいアプリケーションの開発、データや情報のマネジメントの改革、堅牢なセキュリティ対策の確保──など、クラウド化に伴う幅広いご要望に応えるために「オラクル・クラウド・プラットフォーム」でさまざまなソリューションやサービスを用意している。

 既にオラクルのソリューションを活用して、成果を上げている企業もある。神奈川県の箱根で7店舗の旅館とホテルを運営する老舗温泉旅館「一の湯」も、その一つだ。増加するインバウンド需要に向けた顧客サービス強化のために「オラクル・サービス・クラウド」を利用。ウェブサイト上での顧客の行動を管理し、顧客のニーズを把握している。ウェブサイト上のFAQ(よくある質問と回答)の最適化など、顧客満足度の向上に取り組んでいる。

 讃岐うどんチェーン「はなまるうどん」を運営するはなまるも、オラクルのクラウドソリューションで業務の生産性を大きく向上している。従来、300近い店舗のデータを表計算ソフトで集計していたため、経営層に報告するまでに時間を要していた。それを、経営管理ソリューションの「ハイペリオン」のクラウドサービスを利用することで、この煩雑な作業がなくなり、一元化されたリアルタイムのデータで経営判断を下せるようになった。

 オラクルのクラウドは、SaaS、PaaS、IaaSの全てをそろえている。単一のプラットフォームで、パブリッククラウドとプライベートクラウドに対応できる。お客様のご要望の全てに応えて、クラウド化を支援していきたい。