基幹系システムを再構築して企業の競争力を高めようとするのは、みずほ銀だけではない。例えば東京ガスは1998年に刷新したCIS(顧客情報システム)を20年ぶりに全面刷新する。2度めの刷新に挑む狙いについて、沢田和昌IT活用推進部長は「デジタルビジネスの推進だ」と言い切る。

 同社は新CISの主要部分を2019年までに稼働させる。SOAとAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を使い、主要な機能を疎結合にする。デジタルビジネス側のシステムから基幹系システムのデータを柔軟に呼び出せるようにするためだ。刷新費用は非公表だが1000人規模の体制を組む。電力やガスの小売りが自由化され、新たな競争を勝ち抜くため大型投資に踏み切る。

長期稼働する基幹系システムが抱える課題
長期稼働する基幹系システムが抱える課題
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 同社はネットにつながるスマートガスメーターを今後10年で顧客の1100万世帯に普及させる計画。ただ「スマートガスメーターが仮に1台1万円とすればそれだけでも1100億円の投資になる。単純にばらまけばいいというものではない」(沢田部長)。既存の検針員をどう生かすかといったテーマも含め「新しいサービスで付加価値を高めなければいけない。それには大量データを保有する基幹系システムから、様々な形式や頻度でデータを取得できる柔軟さが不可欠だ」(同)。

業務のあり方から見直し

 経理部門の一人ひとりがデータ分析に取り組む――。こんな情報活用の将来像を描き、100億~500億円(本誌推計)を投じて刷新に取り組むのが伊藤忠商事だ。現在の基幹系システムは欧州SAPのERP(統合基幹業務システム)パッケージ「SAP R/3」を使って2001年に稼働させた。現在はSAP ERP 6.0にバージョンアップしているが、今回、COBOLで作った30万ステップ規模のサブシステムを撤廃するなどして、2018年度までに「SAP S/4HANA」に刷新する。単なるバージョンアップではなく、業務のあり方から見直す。

 「新システムはIoTやAI関連の新機能が使える。世界の企業は最新のERPを活用して新技術を事業に取り込もうとしており、当社もその流れに乗る」。伊藤忠商事の野際宏至IT企画部全社システム室長は意気込む。

 日本航空(JAL)は800億円以上を投じて旅客系システムを刷新する。座席予約やチェックインなど旅客業務の中核を担うシステムだ。約50年にわたり追加・修整を重ねた業務アプリケーションを、スペインのアマデウスが提供するクラウドサービス「Altea(アルテア)」に刷新する。別々だった国内線と国際線のシステムを一本化する「内際統合」も断行。2017年11月16日に切り替える。

 世界で普及するクラウドを採用することで、特に国内線では一部のサービスが使えなくなる。競争上は不利になる可能性もあるが、業務効率を引き上げ、関連コストを下げられれば、競争力を高める余地が生まれる。