総費用は東京スカイツリー7基分──。みずほ銀行の勘定系再構築プロジェクトのゴールがようやく見えてきた。経営統合から15年、「また失敗する」など批判的な見方があるなか「9合目」までたどり着いたのには理由があった。

 みずほ銀行が2012年に着手した勘定系の全面刷新は、旧みずほ銀行と旧みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行の勘定系システムを統合するプロジェクトだ。片寄せではなく、全く新しいシステムを開発している。2018年秋にも切り替えを始め、2019年末までに全面稼働させる見込みだ。

 みずほ銀は当初2016年3月末に予定していた開発完了(総合テストの完了)を2度延期。2017年7月末にようやく開発を完了させた。今後は全面稼働に向けて利用部門の受け入れテストや切り替えリハーサル、運用試験などに注力する。登山に例えれば「9合目」まで到達し、頂上が見えてきたところだ。

みずほ銀行が取り組む次期システム構築プロジェクト
みずほ銀行が取り組む次期システム構築プロジェクト
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 開発費は4000億円台半ば、ピーク時の参加人数は7000~8000人、本格着手から全面稼働まで7年間――。総事業費約650億円の東京スカイツリーを7基建てられる規模だ。

 ただでさえ巨大なプロジェクトだが、実はもっと規模が大きくなっていた可能性がある。現在の規模に抑えられたのは、3つの勘定系に備わった機能や商品を全て盛り込むのではなく、必要最低限に絞り込んだからだ。業務と商品を見直し、システムをスリムにしたのだ。

 商品について米井公治常務執行役員IT・システム企画部長は「顧客に迷惑をかけない範囲で減らし、どうしても必要なものだけを残した」と明かす。廃止した古い商品の顧客に、他の商品へ移ってもらったことも。商品を減らせば、プログラムやデータの削減につながる。仕事の進め方についても「みずほの新しい事務フローを作ろうと時間をかけてじっくりと議論した」(米井常務執行役員)。

 3つの勘定系の機能を網羅した「最小公倍数」のようなシステムではなく、スリムなシステムを目指した。“スリム化”の作業が長引いた結果、「要件定義に入るまで(予定よりも)時間がかかった」(同)。当初の予定よりも完成時期が遅れた原因の1つとなった。

 旧みずほ銀の勘定系システム「STEPS」は1988年の稼働で、もうじき30歳を迎える。拡張に次ぐ拡張で「法制度対応などにかなりコストがかかっている」(同)。

新商品の開発期間を35%削減

 スリム化を実現するため、システムのアーキテクチャーも抜本的に見直した。具体的にはSOA(サービス指向アーキテクチャー)を採用し、流動性預金や与信など11種類の業務プログラムを部品(コンポーネント)化した。ある業務に関する部品を差し替えても他の業務に与える影響を最小限にとどめることができる、変化に強いシステムを目指した。