2回に渡ってFPGAについて説明してきた。最終回であるこの3回目では、実際のFPGAの種類や製品展開をもう少し細かく紹介する。

どんなFPGAベンダーがあるのか

 以前は、多数のメーカーがFPGAないしそれに類したものを手がけていた。ただベンダーの買収や製品ラインの統合、売却なども相まって、現在ベンダーはそれほど多くない。「EETimes」でPaul Dillien氏が執筆した記事によると、市場規模はおよそ4500億円程度。その半分以上を米ザイリンクスが占めており、2番手として米インテルが買収した米アルテアが追い上げている。この2社で市場の大半を占めている「2強体制」である。

 3番手は2010年に米アクテルというFPGA専業メーカーを買収した米マイクロセミ、4番手が米ラティスセミコンダクターだ。主要FPGAベンダーといえば、この4社を指す。ちなみにラティスセミコンダクターは、中国のファンドが買収を提案していたが、2017年9月に米国のトランプ大統領が買収阻止の命令を出している。

 このほかには規模が一回り小さい米クイックロジック、独自の超高速FPGAを提供する米アクロニクスセミコンダクター、過去に製品を出しており現在もラインアップを持っている米アトメル(米マイクロチップ・テクノロジーが買収)などがある。

 主要4社については以下の通りだ。

ザイリンクス
 1987年に世界初のFPGAを発売した企業であり、現在もトップシェアを握っている。元々は「グルーロジック」(既にあるASICや汎用チップに、新しい回路を付け足す、機能/仕様変更に対応させる、付け足し回路の意味)向けが多かったが、半導体プロセスの微細化に合わせてLUT(Lookup Table:FPGA内の回路の一種)数を増やしてゆき、現在では極めて大規模なFPGAを提供できるようになっている。同社のラインアップは元々「Virtex」(ハイエンド)と「Spartan」(ローエンド)の2製品だったが、2010年の7シリーズから、「Kintex」や「Artix」というミドルグレードのラインアップも追加されている。

アルテラ
 創業は1983年。実はザイリンクス(1984年創業)よりも先だ。もっとも、同社が最初手がけていたのは「CPLD」(Complex Programmable Logic Device)というPLDの大型版(1つのチップに多数のLUTがあるのはFPGAに近いが、SRAMではなく電気的ヒューズベース)であり、FPGAマーケットへの参入は1992年と遅めである。

 ただCPLD時代からの開発者に愛好されたこともあり、ザイリンクスに次ぐシェアを握って、長らく健闘してきた。ラインアップとしてはハイエンドが「Stratix」、ローエンドが「Cyclone」であるが、ミドルレンジ向けに「Arria」というシリーズも追加された。この他にCPLDの延長である「MAX」シリーズとか、セミカスタムASICとでも言うべき「HardCopy」シリーズなど、幅広いラインアップを用意していたのも特徴だった。ただし、HardCopyシリーズはインテルによる買収の際に廃止になった。同社はまた、FPGA用の電源ICも提供しているのも特徴である。アルテラがインテルに買収されたのは2015年。現在は、インテルのブランドで引き続き製品を提供している。

マイクロセミ(アクテル)
 1985年創業のアクテルは、元々は「アンチヒューズ」と呼ばれる「OTP」(One Time Programming:1回だけ書き込みできる)FPGAを製造していたが、2004年にフラッシュメモリーベースのFPGAの出荷を開始している。アンチヒューズやフラッシュメモリーベースの利点は宇宙線などの影響に強いことと省電力性。航空機や軍用向けなどの、高い信頼性が求められる分野と、携帯機器など省電力性が求められる分野で確実にシェアを握っている。

 ラインアップとしては、ミドルレンジクラスの「ProASIC」と、エントリー向けの「IGLOO」がある。アクテルは2010年にマイクロセミに買収された後、ラインアップが純粋なFPGAからMCU(Micro Controller Unit)やアナログ回路まで搭載した製品にシフトしつつある。同社はこれらの製品を「SmartFusion」と称している。