特定用途に特化してAWSに対抗するベンダーもある。米バーチャストリームは欧州SAP製アプリに特化したクラウドを手掛ける。伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が「CUVICmc2」の名前でバーチャストリーム製のクラウドを2016年8月から運用。ERP(統合基幹業務システム)用クラウドとして売り込み、「契約数20件が見えてきた」と藤岡良樹執行役員は手応えを見せる。なかには3.5テラバイトの巨大データをインメモリーデータベース「SAP HANA」で運用している企業もあるという。AWSのIaaSの最大メモリー容量2テラバイトを超える大規模システムだ。

 バーチャストリームのクラウドはIaaSながら、GAEやLambdaのように負荷に合わせて自動運用できる特徴を売りにする。サーバーレスのPaaSは負荷に応じて自動でクラウドの利用料を安くできるが、SAP製ERPのようなパッケージソフトはPaaSが使えずIaaSが必要になる場合がほとんどだ。

 バーチャストリームのクラウドはIaaSでありながら「μVM」(マイクロVM)という小さいVM単位で性能を自動的に伸縮させ、アプリを使わなかった分だけ利用料を割り引く。「一般的なパブリッククラウドに比べて2割程度安くなる」(藤岡執行役員)という。SAP製アプリのワークロード(処理量)が変化するときの特徴を検知する仕組みが基盤に組み込まれているからできる課金体系だ。

 バーチャストリーム製IaaSはNTTコミュニケーションズも、早ければ2017年9月からサービスを始めるとみられる。国内クラウド分野の台風の目となるかもしれない。

図●「Virtustream」の料金イメージ
図●「Virtustream」の料金イメージ
アプリケーションを動かした分だけ課金
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