メンバーに14時までにドキュメントを完成させるように頼んでいたのに、作成を忘れられていたとする。当然、リーダーのあなたは怒りを覚えるはずだ。何に対して怒っているのだろうか。

(1)メンバー個人に対してイライラしている

(2)作成を忘れたという事実にイライラしている

(3)同じミスを繰り返して改善しない様子にイライラしている

 どれも当てはまりそうと感じたと思う。しかし、実はどれも答えではない。「頼まれた仕事はすべき」「忘れるべきではない」といった、あなたが信じていた「べき」が目の前で裏切られた時に怒りの感情が湧くのだ。

 人は無意識に「当たり前」「できて当然」「普通は~だろう」といった思いを持ち、自分の理想、願望、欲求に沿った出来事や相手の言動を期待する。アンガーマネジメントでは、理想、願望、欲求をひとまとめにして「べき」と呼んでいる。現実は自分の思う「べき」の通りには動かない。「べき」が少しでも裏切られるたびに怒っていると、周囲からは「怒りっぽい接しにくい人」と思われてしまう。

怒りのコントロールに役立つ「三重丸」

 怒りの正体である「べき」を自覚して付き合えるようになると、怒りを上手にコントロールできるようになる。自分が持つ「べき」について、アンガーマネジメントではのような「三重丸」を使って理解を深める。

図●怒りの正体「べき」との付き合い方
図●怒りの正体「べき」との付き合い方
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 三重丸の中央にある緑色のゾーンは自分の「べき」と同じであり、怒りを感じない(OKゾーン)。その一つ外側の黄色いゾーンは、自分の「べき」と同じではないが許容可能(許容ゾーン)。一番外側の赤いゾーンは、自分の「べき」と全く異なり許容できない(NGゾーン)。