テクノロジーで農業を変革する「AgTech(アグテック)」。AgTechの本場である米国のAgTechと、「アグリテック」とも呼ばれている日本のそれとを比較すると、その様相はかなり異なる。日本と米国は何が異なるのか。第4回の今回は、「AgTechエコシステムが違う」を解説しよう(表1)。

表1●日本のアグリテックと米国のAgTech、どこが違う?
違うポイント内容
その1AgTechの牽引役が違う
その2農業ロボットの開発状況が違う
その3農業ドローンの形状が違う
その4農業ドローン開発会社の経歴が違う
その5農業ドローンのライバルが違う
その6AgTechエコシステムが違う(今回)

AgTechの主役はスタートアップ

 米国のAgTechの主役は、やはりスタートアップだ。2017年6月末に米カリフォルニア州サリナス市で開催された「Forbes AgTech Summit」にも数多くのAgTechスタートアップが出展し、自社の技術やビジネスモデルのアピールに余念が無かった(表2)。

表2●Forbes AgTech Summitで見かけたAgTechスタートアップ
分野会社名概要
農業ロボットAbundant Roboticsリンゴ収穫ロボット
農業ロボットBlue River Technology画像認識による間引きロボット
農業ロボットFarmWise Labs画像認識による間引き/雑草駆除ロボット
農業ロボットHarvest Crooイチゴ収穫ロボット
農業ロボットMagGrow農薬散布ハードウエア
農業ロボットSoft Robotics野菜などの収穫に向いたロボットハンド
農業ドローンAeroVironment農業ドローン
農業ドローンPrabug益虫散布ドローン
農業ドローンPrecisionHawk農業ドローン
農業ドローンUAV-IQ農業ドローン用データ分析ソフト
農業データ分析adapt-N窒素肥料の散布管理ソフト
農業データ分析AEROPTIC空撮画像の分析技術
農業データ分析AgShift農業に特化した機械学習と画像認識技術
農業データ分析Auqa4D潅漑管理ソフト
農業データ分析Ceres Imaging空撮画像の分析技術
農業データ分析CiBO Technologies農業データ分析ソフト
農業データ分析CropX灌漑管理ソフト
農業データ分析FarmQA農業データ分析のクラウドサービス
農業データ分析GeoVisual Analytics農業用人工知能ソフト
農業データ分析Rapiscan SystemsX線を活用した収穫支援デバイス
農業データ分析Spectrum Technologies農業データ収集ソリューションを販売
農業データ分析WaterBit潅漑管理ソフト
農作業効率化アプリbext360コーヒーのサプライチェーン管理
農作業効率化アプリFarmDogスカウティング(農場監視)のソフト
農作業効率化アプリHeavy Connect農園労働者の作業管理アプリケーション
農作業効率化アプリSpensaスカウティング(農場監視)ソフト
農作業効率化アプリVinsight Softwareワイン農場管理ソフト
農作業効率化アプリWexus農場向けエネルギー管理ソフト
植物工場BrightFarms都市部で野菜水耕栽培をするスタートアップ
植物工場Lumigrow植物工場向けのLED照明システム

 第2回や第3回で紹介したのは、これらのAgTechスタートアップの中でも既に製品を開発している企業だ。それ以外にもForbes AgTech Summitには、これからの製品化を目指して技術開発に邁進しているスタートアップや、起業する前の研究者なども集まり、自らのビジョンに出資してくれる投資家を見つけようとしていた。

学生が自身のアイデアで起業を目指す

 Forbes AgTech Summitで見かけたプロトタイプもいくつか紹介しよう。米Savannah College of Art and Design(SCAD)を卒業したばかりのAnna Haldewang氏が出展した「Plan Bee」は、ミツバチに代わって受粉を担うことを狙った小型ドローンだ(写真1)。

写真1●受粉ドローン「Plan Bee」を手に持つAnna Haldewang氏
写真1●受粉ドローン「Plan Bee」を手に持つAnna Haldewang氏
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 ミツバチが花から花へと飛び回って蜜を集める際に身にまとう花粉は、果樹の受粉に大きな役割を果たしている。Haldewang氏はSCADでデザインを学ぶカリキュラムの中で、ミツバチのそうした行動を模倣したドローンであるPlan Beeのコンセプトを開発した。SCADの卒業後は、Plan Beeの製品化に専念している。