2017年8月27日(米国時間)、クラウドインフラやデジタルモビリティに関するイベント「VMworld 2017」が米国ラスベガスで開幕した。28日の基調講演には、米ヴイエムウェアのパット・ゲルシンガーCEO(最高経営責任者)が登壇。プライベートクラウドのモダナイズに向けた製品アップデートや、新たなセキュリティサービス「AppDefense」などを矢継ぎ早に紹介した。
最も注目を集めたのは、VMware製品をAWS(Amazon Web Services)上でオンデマンド提供する「VMware Cloud on AWS」の提供開始だ。2016年10月の戦略提携に基づき両社で開発を進めてきたサービスが、AWSの米国西部(オレゴン)リージョンでスタートを切った。ゲルシンガーCEOに招かれたAWSのアンディ・ジェシーCEOを、会場を埋めた聴衆がこの日一番の大きな拍手で迎えた。
「vCenterを使ったオンプレミスと同じ運用をAWS上で実現できる。新しいモデルを使う必要がない」。ジェシーCEOはVMware Cloud on AWSに移行するメリットをこう説明した。AWS製のサーバーにvSphereなどの製品を導入して提供するVMware Cloud on AWSであれば、VMware製品ベースのオンプレミスシステムを大きな変更なくAWSへ移行できる。サービスの提供、販売、サポートはVMwareが担う。
利用可能なサーバーの台数は最低4から16まで、価格はサーバー単位で1時間当たり8.3681米ドルである。サーバー上の仮想マシンやコンテナのスペック、数はユーザーが決められる。ジェシーCEOが「AWSのインスタンスを立ち上げるより安く済む場合もある」と言うように、仮想マシンの集積度を上げれば費用対効果は高まる。オンプレミス環境でVMware製品を利用中のユーザーに適用される、最大25%のディスカウント効果も大きい。
ヴイエムウェアの狙いは、パブリッククラウドのリーダーであるAWSと手を組み、vSphereなど同社製品をクラウド上で拡販することだ。「リアーキテクトせずに、オンプレミスのシステムをそのままクラウドに移行できる」(ゲルシンガーCEO)ので、クラウド移行を機に同社製品から離れようという顧客のつなぎとめに使える。オンプレミス環境とAWSでハイブリッドクラウドを構築し、アプリやワークロードを行き来させられるメリットも打ち出す。
AWSにとってはヴイエムウェアがオンプレミス環境で抱えるエンタープライズ顧客がターゲット。移行の手軽さを訴求し、AWSへの巻き取りを加速したい考えだ。ライバルの筆頭とされる「Microsfot Azure」との比較で、「AWSにはオンプレミス環境のソリューションが無い」という声も押さえられる。
VMware Cloud on AWSは、2018年中にはAWSの全リージョンに広げる計画だ。「エンジニアやマーケティングの連携はこれから深めていく」とゲルシンガーCEO。オンプレミス環境とパブリッククラウドの強者連合が生み出した新サービスの先行きが注目される。