セブン&アイ・ホールディングスとアスクルがネット通販とネットスーパーで提携──。2017年7月6日、小売り業界に衝撃が走った。

 2017年2月期の営業収益(売上高)が5兆8000億円を超える小売り業の巨人であるセブン&アイと、同5月期の売上高が約3300億円とセブン&アイの15分の1にも満たないアスクルの電撃提携。企業規模の差は歴然としており、一部の商品販売では競合関係にもある両社が手を組んだ。共通のライバルはアマゾンジャパンか、楽天か。

 アスクルといえば、2017年2月に埼玉県三芳町にある、BtoC事業「LOHACO(ロハコ)」の主力物流センター「ASKUL Logi PARK 首都圏」で大規模な火災が発生し、SCM(サプライチェーン管理)が機能不全に陥ったばかり。火災で痛手を負った身であり、SCMの再建途上にある。しかもロハコはいまだに黒字転換していない。そんなアスクルを、セブン&アイはネット通販のパートナーに選んだ。

 アスクルにとって今回の提携は、火災で落ち込んだ会社の勢いや社員の士気を取り戻す絶好のチャンスといえるだろう。提携相手としてセブン&アイは申し分のない相手だ。大きな後ろ盾を得たことになる。

 セブン&アイの商品開発力や調達力は日本最大規模。同社のプライベートブランド(PB)商品である「セブンプレミアム」などをアスクルが扱えるようになるのは大きな飛躍につながる。

 両社の提携の2日前、アスクルが通期決算発表時に明かした2018年5月期末の計画は、商品数が火災前の2倍、ロハコの出荷能力は同1.6倍超に拡大させるという、いずれも強気な目標だった。今にして思えば、セブン&アイとの提携も織り込み済みだったのだろう。

 ただし、アスクルはセブン&アイと組んだことで、これまでより一段も二段も高い、厳しい販売競争のステージに立つ決意をしたともいえる。売上高の差が示す通り、セブン&アイが取り扱う物量はアスクルよりもケタ違いに多い。ネット通販に限った提携とはいえ、今までのアスクルの“常識”はもはや通用しない規模が求められるケースも出てくるはずだ。