この連載では、デジタル技術を活用した計画的かつ創発的な変革である「デジタル変革(デジタルトランスフォーメーション)」に挑む国内外の一流企業の事例を基に、デジタル変革の要諦を説明している。
第1回はインドのアジアンペインツ、独アルディ、仏BNPパリバの事例を通じて、デジタル変革の概要と3社に共通する定石を紹介した。第2回は米ウェルズ・ファーゴとセブン-イレブン・ジャパンの事例を通じて、デジタル変革を実践するための「価値創造サイクル」を取り上げた。
価値創造サイクルを回し続るのが肝要
前回説明した価値創造サイクルの仕組みを実現すれば、企業はデジタル化を活用した新たなビジネスを継続的に生み出せるようになるのだろうか。必ずしもそうとは限らない。
「新しい技術を使って何かできないか」などとシーズ先行のアプローチを取ると、すぐに行き詰まってしまう可能性が高い。先行する他社の後追いに終始したり、「ベンダーが薦めるから」といった受け身の態度で臨んだりする場合も、尻すぼみに終わってしまいかねない。価値創造サイクルの仕組みを作るのはもちろん大切だが、それと同じくらい、いかにサイクルを回し続けるかが重要になる。
前回、価値連鎖の変革に必要な要素である「イネーブラー」(実現可能にするもの)について説明した。価値創造サイクルを持続的に回し、デジタル変革を続けるためには、価値観、組織、人材、プロセスといったイネーブラーが鍵を握る。事例を交えつつ説明する。
- NTTドコモ
- エトナ(Aetna)
- ゼネラル・エレクトリック(GE)
- グーグル
- セブン-イレブン・ジャパン(前回の続き)
- ウェルズ・ファーゴ(前回の続き)
イネーブラー1:価値観
自らのエコシステム像を描く
商品・サービス開発サイクルに知識創造サイクルを埋め込んだ「価値創発サイクル」と、商品・サービス提供サイクルに知識創造サイクルを埋め込んだ「価値増幅サイクル」を整合させて価値創造サイクルを回し続けるためには、将来に向けた価値創造のあり方と目標を共有する必要がある。