デジタル技術を活用した計画的かつ創発的な変革である「デジタル変革(デジタルトランスフォーメーション)」に挑む企業が相次ぎ登場している。この連載では国内外の一流企業の事例を基に、デジタル変革を進めるうえでの要諦を探る。

 今回は海外3社の事例を通じて、デジタル変革とは何かと、3社に共通する定石を見ていく。

●今回取り上げる企業
  • アジアンペインツ(Asian Paints)
  • アルディ(ALDI)
  • BNPパリバ(BNP Paribas)

最注目のデジタル化はIoT

 デジタル化、デジタル技術という言葉が昨今話題になっている。事例を見る前に、これらが何を意味するのか、企業にとってなぜ今重要なキーワードとして浮上しているのかに改めて触れておきたい。

 デジタル化とは「進歩したIT(デジタル技術)」でモノや人の振る舞いに関するデータを収集し、そのデータを解釈して何らかの意味を探知し、その結果に基づいて適切に対処する、という一連の作業を指す。ここでいう進歩したITとはスマートフォンをはじめとするモバイル、ソーシャルメディア、クラウドコンピューティングなどを指す。

 現時点で最も注目されているデジタル化は、センサーを使ってモノの動きに関するデータを収集して何らかの変化を予見し、適切にコントロールするIoT(インターネット・オブ・シングズ、モノのインターネット)だろう。設備や装置の稼働データを収集し活用して、予防保守の質や稼働効率の向上、さらにコスト削減や顧客サービスの向上につなげる。自動運転車を実現するうえでも重要な役割を果たす。

 このアプローチは人に対しても適用できる。人の振る舞いや考えに関するデータを収集してそれぞれの人の思考の変化を探知し、適切な情報やサービスを提供することで各人に応じた価値を創出する、というものだ。筆者はIoH(Internet of Human、ヒトのインターネット)と呼んでいる。