IoT(インターネット・オブ・シングズ)通信技術の本命とされる「LPWA(Low Power Wide Area)」。期待される使い方の一つに、監視システムと多数の機器をつなぎ、機器の状態を把握するというものがある。現在位置、温度、湿度、バッテリー残量などの情報を機器から集めるわけだ。こうしたシンプルな使い方の場合、機器から監視システムへの“上り通信”ができればよい。だが、IoTの使い方はそれだけではない。

 「双方向通信も大事」。関西電力、ケイ・オプティコム、日本マイクロソフトが開始したLPWAの実証実験に参加したガス会社の岩谷産業はこう説明する。同社は、LPガスメーターの遠隔検針などに関して技術検証を進めている。その狙いは、LPガスメーターを集中監視するコストを下げることだ。同社はなぜ、双方向通信を重視するのだろうか?

ガスメーター集中監視の効率に課題

 岩谷産業は、子会社や販売会社を通じて約100万戸にLPガスを提供している。各戸にはLPガスメーターが設置され、メーター横にあるNCU(Network Control Unit)から、メーターの情報を、親機を介して「テレセーフセンター」という集中監視センターに送っている。課題はそのコストだ。

LPガスメーター(右)とLoRaWAN対応の無線子機(左)。通常は無線子機のところにと特小無線または有線で通信するNCUが付いている
LPガスメーター(右)とLoRaWAN対応の無線子機(左)。通常は無線子機のところにと特小無線または有線で通信するNCUが付いている
(出所:ケイ・オプティコム、3枚目の写真まで同じ)
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 NCUと親機は特定小電力無線または有線で接続する。無線の場合、そのコストは販売店など親機の所有者が持つ。有線の場合、LPガスを使っている家庭から電話線を借用する。通信費は顧客が負担するが、その家庭が回線をアナログ電話からISDN、ADSLと入れ替えていくと、NCUの置き換えが発生し、置き換えコストがかかる。また親機とテレセーフセンターは携帯電話回線(FOMA)で結んでおり、その分の通信費も発生する。親機とテレセーフセンターの通信費用は、親機の所有者が持っている。

 親機のカバーエリアにも課題がある。岩谷産業 総合エネルギー本部 供給保安システム部の梅田 彰彦担当部長は、「親機のカバーエリアは半径200~300m程度で、その範囲に30~40戸の顧客がいないと(採算的に)厳しい。地方部ではそれだけの密度がないケースもある」と話す。