Q

決済・送金についての金融規制の全体像を教えてください。

A

送金(為替取引)は銀行法や資金決済法の下で金融規制がかかる一方で、決済は必ずしも金融規制がかかりません。

 決済や送金についての金融規制は複雑です。

 そもそも法律上の「送金」を意味する「為替取引」とは、一般に、隔地者(意思伝達に時間がかかる場所や状態にある相手方)間で、直接金銭を輸送することなく、金銭の受け渡しをすることをいいます。遠隔地への送金手段として、現金を直接送付する場合のリスクを避けるために使います。

 江戸時代の両替商は金銀銭貨の交換ニーズを背景として登場しましたが、商人や大名などを主たる取引相手として、手形の発行・決済、金銭の貸し付け、為替の取り組み・決済など各種の金融業務を広く営むようになりました。明治時代には、両替商の習慣と欧米流の銀行業務を合わせる形での為替会社(バンクの訳語)が設立され、これをもとに国立銀行が登場、その後普通銀行への転換が行われました。

 明治から昭和にかけて、為替業務については、長年銀行の排他的独占業務とされてきており、極めて厳格な免許制により、金融庁の下で監督を受けて営まれてきたのが送金(為替取引)であるといえます。

 一方で、決済の分野は、金融機関に限らず様々な事業者が扱ってきています。「決済」とは、一般に、債権債務関係を解消することをいい、取引によって債権債務関係が発生した場合に必ず問題となるのが代金決済となります。決済手段についてみると、日本では、古くから贈答文化もあり、商品券については江戸時代から確認されています。クレジットも月賦がその起源となっており、古くから営まれてきています。

 1960年代に欧米から導入されたクレジットカード業務は、商取引からは一線を画してきた金融機関では扱ってはならないものとされ、クレジットカード会社が取り扱うこととなり、非金融機関において決済業務の取り扱いが活発化してきました。クレジットカード会社は、商取引を所管する経済産業省の下で監督を受けることとなり、割賦販売法によって規律されることになりました。また収納代行サービスについては、1987年にコンビニでの電気代の収納が開始され、2003年には地方税や国民健康保険料のコンビニ納付も可能となりました。

 このような社会環境が先行する中、「為替取引」(銀行法2条2項2号)につき銀行法にも資金決済法にも定義規定はなく、いかなる業務が為替取引に該当するかについて、個別に解釈が行われてきました。しかし、平成13年3月12日(刑集55巻2号97頁、判例タイムズ1059号66頁)は、為替取引の意義について、「『為替取引を行うこと』とは、顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、又はこれを引き受けて遂行することをいう」と判示しており、為替取引の定義が広く示されたことにより、主として決済業務として営まれてきたものの一部が銀行法上の為替取引にも該当するのではないかという疑義が生じることになります。