Q

大企業がスタートアップ企業とオープンイノベーションに取り組む際に陥りがちな失敗と対処法について教えてください。

A

日本の伝統的な大企業の場合、スタートアップ企業との協業における資金拠出の意味を取り違えてしまうことで失敗するケースが散見されます。自らの資金拠出の意味を正しく理解し、成果物や収益のシェアについて目線のあった議論を交わすことが重要です。

大企業によるオープンイノベーションの着眼点

 大企業にとってのオープンイノベーションの肝は、既存顧客のハイエンドな要求に応えるために自社のリソースを用いて行っている漸進的なイノベーションからは届かない(又は死角になっている)、外部におけるラディカルイノベーションやそのリソースにどのようにアクセスするか、という点にあります。

 特にラディカルイノベーションは、既存のビジネスの延長線上にありませんので、なにが勝ち筋なのかは試行錯誤によってしか発見することができません。すると、勝ち筋のラディカルイノベーションに到達するために最もオッズの高い方法は、可能な限り多くの数を試すことにあります。同様のことは他の事業者も行っていますので、競争に勝つためには、この勝ち筋に最速でたどり着く必要がります。

 そして、効率的にこの勝ち筋にたどり着くためには、一回当たりのトライアルのコストを最小化する必要があります。つまり、「可能な限り速く」「可能な限り安く」「可能な限り多く」トライアルを行うことができる事業者が、ラディカルイノベーションの競争の勝者に最も近い事業者ということになります。これを行うのに最適化した組織は、トップがリーダーシップを発揮できるシンプルで給与水準も高くない組織、すなわちスタートアップ企業です。

 このように、大企業によるオープンイノベーションにとって最も重要なテーマの一つは「どのようにスタートアップ企業と協業していくか」ということにあります。

スタートアップ企業とのwin-winの関係の構築

 win-winの関係を実現する協業(コラボレーション)を実現していくためには、双方の持っているもの・持っていないものを正しく分析する必要があります。

 まず、大企業が持っているものは資金、顧客(ビジネスモデル)、組織です。これに対して、スタートアップ企業は資金がなく、ビジネスモデルも未確立、事業をスケールさせていくための組織もありません。スタートアップ企業は、自らの事業を創造するため、大企業が持っている資金、顧客、手助けが欲しいと考えています。