Q

InsurTechとはなんですか。InsurTechの考え方と今後のInsurTechの展望について教えてください。

A

Insurance(保険)とTechnology(技術)を掛け合わせた造語です。保険の引受け、保険料の運用、保険金の支払い、保険商品の販売といった保険会社が手掛ける4つの機能についてテクノロジーを適用して今までにないサービスを生み出そうとする動きが出てきています。IoTの進化と呼応して破壊的なイノベーションが今後起きると期待されています。

 InsurTechとは、ひと言でいえば保険版のFinTechです。FinTechを、既存の金融機関が複数の機能を統合して顧客に対して一気通貫して提供するモデルであったものを、機能別に分解して、必要に応じてこれを組み合わせることで同等のサービスを顧客に提供するモデルとして見た場合、保険ビジネスも、他の金融ビジネスと同様のアプローチでイノベーションについて考えることができます。

 保険会社が提供している機能は、保険の引受け、保険料の運用、保険金の支払い、保険商品の販売の4つに分けることができます。このうち保険料の運用機能は基本的に資産運用ビジネスなので、金融商品取引業の領域と整理することができます。

 保険商品の販売は、現在、保険代理店が手がける保険募集ビジネスを中心に、保険募集に入る手前の見込み客の発掘を手がける募集関連行為ビジネスが存在しています。また、現在は個人向けにはあまり活用されていませんが、保険代理店が保険会社から委託を受けて保険を販売するのに対して、顧客から委託を受けて保険会社から保険を調達してくる保険仲立人というビジネスモデルが存在します。

 保険の引受けは、保険会社の中核となる機能です。保険引受サービスを提供できるのは、保険会社のほかに、小口・短期に限定した保険を提供することができる少額短期保険業者がいます。また、個人や企業に対して保険を提供する保険会社、少額短期保険業者のほかに、これらの保険業者に対して保険を提供する再保険会社というビジネスモデルもあります。

 保険金の支払いは、顧客に保険金の給付事由が発生したときに、約束した保険金を支払う機能です。保険金の支払い機能には、特段の業法上の資格は存在しませんが、他の金融ビジネスと比較した場合に保険会社のビジネスを最も特徴づける機能といえます。

 生命保険(第一分野保険)であれば人の死亡や生存を、損害保険(第二分野保険)であれば一定の保険事故を、医療・介護保険(第三分野保険)であれば疾病や介護をトリガーに保険金の給付が行われます。保険会社は、被保険者・保険金受取人からなされる保険金支払いの請求(クレームと呼ばれます)が、正当なものであるかどうかを調査し、また請求に対していくら支払うかについて査定を行った上で、支払いを実施します。支払の正当性を確認し、支払額を確定するために、保険会社は、必ずしもIT化されているわけではない実社会との接触を必要とするところに、FinTechという領域から見た特徴があるといえます。