課題を分解する際、いきなり分解する要素を考えると全体像をつかみにくくなり、かえって整理しづらくなると、前回指摘した。その対処法の一つとして提案したのが「切り口に沿ったカテゴリーを考えること」だった。

 前回の「大学のキャンパスにいる人」を分解・整理する問題を改めて考えてみよう。

 まずは「災害時の避難経路を通知する計画を立てる」という目的にかなった切り口と、そのカテゴリーを考えた。常に「目的や背景」に沿った切り口を考えることがポイントだ。

「大学のキャンパスにいる人」をカテゴリーで分解してみる
「大学のキャンパスにいる人」をカテゴリーで分解してみる
(出所:データ&ストーリー)
[画像のクリックで拡大表示]

 これらのカテゴリーに該当する要素を考えると、例えば次のような分解が可能になる。

各カテゴリーに該当する要素を考えてみる
各カテゴリーに該当する要素を考えてみる
(出所:データ&ストーリー)
[画像のクリックで拡大表示]

 これ以外の要素の組み合わせも当然あるだろう。ただ、ここではその違いは大きな問題ではない。

 ある思想(ここでは「切り口」や「カテゴリー」に相当)を持って分解すると、全体を論理的に整理しながら把握しやすくなるため、抜け・漏れのチェックがしやすい。しかも分解した結果を目的(このケースでは避難手順の通知)に応用しやすくなるという、実践的な利点があることに注目してほしい。

 ただ、このような演習をすると、何が何でも、全ての要素を100%出し切ろうと頑張る人が出てくる。例えば、大学のキャンパスにいる図書館員を「常勤の事務員の後ろに付けなければダメなのではないか」といった具合だ。大学で働く事務員の構成は、図書館員だけではない。そのため、全ての職種を書き連ねるという作業が始まってしまう。

 ここで再度、この図は「何のために作っているのか」を考えてほしい。

 立場による避難手順の違いを明確にし、整理することが目的であれば、その方法や内容に差が出ないグループの内訳を全て記載することは無駄といえる。逆に、避難手順を通知する対象を漏れなく網羅するため、全てを挙げておきたいというのが目的であれば、図書館員といった細かいレベルまで記載や確認が必要になる。

 要は「全ての要素を挙げること」に固執し、目的を忘れて突っ走るのはやめようということだ。常に目的に照らして考える癖を付けるべきである。