NTTドコモとKDDIが2017年6~7月に打ち出した新料金は端末の購入補助を受けられない代わりに毎月の通信料金を安くした分離プランであり、端末と回線が一体となった現行の販売モデルから脱却を図ろうとしていることを意味する。携帯電話大手を中心としたエコシステムも徐々に変わっていくとみられ、影響は端末メーカーや販売代理店にも広く及びそうだ。

端末メーカーはミドルレンジ強化か

 スマートフォンは成熟化が進み、性能や機能の向上ペースは以前より落ち着いてきた。端末買い替えサイクルも長期化する傾向があり、内閣府の消費動向調査(2017年3月)によれば平均4.4年(使用年数)まで伸びた。携帯電話大手の料金プランは現状、2年契約を条件に割り引きを適用するタイプが主流となっており、端末買い替えサイクルとのかい離は広がるばかりだ。

 NTTドコモとKDDIが新たに投入した分離プランは、まさにこうした実態を踏まえたものであり、端末を長く使い続けるユーザーには打ってつけ。別の見方をすれば、ユーザーに端末の買い替えを促さないプランとも言える。

 これまでスマートフォンは、本体価格そのものより、端末購入補助で毎月の通信料金を割り引いた「実質負担額」を前面に打ち出して販売されてきた。それもハイエンド端末の代表格であるiPhoneが実質負担額でお得感があるような売り方だった。

 だが、分離プランでは端末購入補助がなくなって実質負担額を前面に打ち出せなくなるため、多くのユーザーには端末の値上げに映る可能性がある。となれば、ハイエンド端末(8万~10万円程度)のおよそ半額で入手できるミドルレンジ端末(4万~5万円程度)の魅力が相対的に高まる。最近ではミドルレンジ端末とハイエンド端末の性能差も縮まってきており、ミドルレンジに強い端末メーカーには追い風となりそうだ。ハイエンドを中心に手掛けてきた端末メーカーもミドルレンジに軸足を寄せてくるかもしれない。

 もっとも、最終的には携帯電話大手の施策次第でもある。KDDIが導入した「アップグレードプログラムEX」(月390円)は、加入して2年後に端末を買い替えれば48回の割賦代金が最大半額になる。2年でハイエンド端末への買い替えを促す仕組みだが、実質的には4年契約であり、ユーザーを強く“縛る”プログラムとなっている。