NTTドコモとKDDI(au)が2017年6~7月に相次ぎ打ち出した新料金プランにより、格安スマホとの料金差は大幅に縮まった。今後は体力勝負となっていくことが想定され、多くのMVNO(仮想移動体通信事業者)が打撃を受けそうだ。MVNOは現状、料金競争に終始しているが、新たな機軸を打ち出し、いかに差異化を図れるかが注目となる。

顧客単価の引き上げに成功するも損益分岐点が上昇

 総務省によると、MVNOの事業者数は2017年3月末時点で684者。このうち、多くは赤字とみられる。

 MVNOは当初、月500円程度の通信料金を打ち出して安さを競っていたが、店舗展開や端末のセット販売、iPhoneの旧モデルの取り扱いなどを拡大。販売スタイルを携帯電話大手に近づけることで契約数を伸ばし、最近では月1500円前後のARPU(契約当たり月間平均収入)を獲得できるようになってきた。

 ただ、携帯電話大手と似たような販売スタイルを採用すれば当然、店舗運営や端末調達などで営業費用がかさむ。顧客単価の引き上げには成功したものの、一方で損益分岐点も上昇しており、なかなか黒字転換できない苦しい状況が続く。

 この状況下で携帯電話大手による今回の新料金プランである。NTTドコモは「シンプルプラン」と「docomo with」を組み合わせれば月280円で子回線を維持できるほか、KDDIもサブブランドに加え、トップブランドでも月1980円の低水準を打ち出してきた。MVNOへの打撃は必至の状況となっている。

NTTドコモは「シンプルプラン」と「docomo with」を組み合わせれば月280円で子回線を維持できる。
NTTドコモは「シンプルプラン」と「docomo with」を組み合わせれば月280円で子回線を維持できる。
出所:NTTドコモ
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 とはいえ、MVNOも採算ラインに乗るまで販促の手を緩めるわけにはいかない。こうして体力勝負になっていくと、規模の小さなMVNOは明らかに不利である。携帯電話大手の通信料金と差があったからこそ、MVNOの存在が際立ち、活況を呈していたわけで、この前提が崩れつつある。

 市場の淘汰は既に始まっている。老舗のビッグローブ(BIGLOBE)はKDDIに、ニフティ(Nifty、個人向け事業)はノジマに、それぞれ買収された。こうした合従連衡がさらに加速する可能性がある。

ドコモ狙い打ちでサブブランド攻勢は続く

 今後は携帯電話大手のサブブランドも位置付けが変わっていくとみられる。今回、KDDIがトップブランドで月1980円の料金を打ち出すと、サブブランドのUQ mobileは押し出されるように「家族割で月1480円」とディスカウントした数字でマーケティングを始めた。ブランドの序列は維持しているものの、棲み分けはどうしてもあいまいにならざるを得ない。

 そもそも携帯電話大手は、サブブランドを軸としたマーケティングを避けたいはずだ。サブブランドによる顧客獲得は、競合他社からの乗り換えであれば増収につながるが、トップブランドの受け皿となる場合は顧客単価の低下で減収を招くだけだからだ。