「この6、7年で世の中は決定的に変わった。この先はさらにすごい変革がやってくる。寝る時間ももったいなく、胸を躍らせている。ワクワクするような時代に生まれてきたことを幸運に思う」。ソフトバンクグループの孫正義社長は目を輝かせながらこう語る。

 2017年7月20日、同社イベント「SoftBank World 2017」で、孫社長はソフトバンクが投資した英アーム、米ワンウェブ、米ボストンダイナミクスなどの企業と目指すビジョンについて語った。

 人工知能(AI)、IoT(インターネット・オブ・シングズ)、ロボティクス、そして医療、農業、交通・・・。投資先の各企業の専門領域は、多岐にわたる。孫社長は彼らを「同志」と呼ぶ。目指すのは、志をともにするこの仲間たちと一緒に、「革命」を起こすことだ。孫社長が、同志たちと向かおうとしているのはどんな未来なのか。


 ソフトバンクは、新しい時代の「ジェントリ」になりたい。ジェントリは、紳士という意味の「ジェントルマン」の語源だ。18世紀に起きた産業革命の背景には、このジェントリの存在があった。

 当時の騎士たち(ジェントリ)は、王様から特権階級の資産として与えられた土地の運用で豊かな生活を送っていたという。一方、騎士としての社会貢献で、当時のインフラである道路や船に投資していた。この投資は「リスクマネー」だ。このリスクマネーがあったからこそ、蒸気機関が生まれた。すなわち、リスクをとる資本と新しい技術とが重なって、大いなる革命である産業革命が起きた。これは人々の生活を決定的に変えることとなった。

革命のためにリスクマネーを投じる

 今は、情報革命の時代だ。産業革命は人間の身体能力の拡張であったのに対し、情報革命は人間の頭脳、知能の拡張である。人間にとって、筋肉である手や足よりも、脳の方がはるかに重要な意味を持つ。ソフトバンクは情報革命時代のジェントリになる。

 時代は我々に対して追い風だ。ソフトバンクは同じ志、思いを持っている「同志」を我々のグループに迎え入れて、力を合わせて革命を起こす。ソフトバンク一社は決して大きな力を持っていない。1つのテクノロジーや1つのビジネスモデル、1つのブランドで世界をけん引するのではなく、仲間たちと一緒に革命を起こす。

ソフトバンクグループの孫正義社長。投資先である「同志」と一緒に、革命を起こすと意気込む
ソフトバンクグループの孫正義社長。投資先である「同志」と一緒に、革命を起こすと意気込む
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 産業革命の時代にジェントリが資産を投じたように、ソフトバンクはテクノロジーを理解し「リスクマネー」を投じる。革命のためにソフトバンクが用意したリスクマネーは10兆円だ。世界中の他のベンチャーキャピタルをすべて足しても7兆円ほどである。ソフトバンク一社でそれを凌駕した。

シンギュラリティは必ずやってくる

 ロボティクス・AIについては、囲碁で人間がAIに勝てなくなったように、ありとあらゆる推論、予知などでロボットの方が人間よりはるかに賢くなる「シンギュラリティ」は必ずやってくる。30年くらいで来るだろう。

 AIがロボットに組み込まれたとき、人間と同じように街を歩いたり、走ったり、さらには空を飛びながら、海を潜りながら活動する。巨大なロボットもいれば、小さなマイクロロボットもいる。そのロボットたちが、「超知性」を身につけてクラウドでつながり、リアルタイムでありとあらゆる一兆個のモノと通信しあう。