ソフトバンクグループが最近出資した企業の中でも異彩を放つのが、コワーキングスペース(共用オフィス)運営の世界大手WeWork(ウィーワーク)だ。サービスとしての空間という方針の下、ITを活用した共用オフィス運営を手掛ける。2018年初めにもサービスを始める日本法人代表に就任するクリス・ヒル氏に、日本での戦略を聞いた。

(聞き手は玉置 亮太=日経コンピュータ


「WeWork」のサービスの特徴は何か。

 起業家やクリエーターが働きやすい環境を作るための、世界規模のネットワークを運営している企業であることだ。私たちは当社のことを、単なるシェアードオフィスを運営する企業と認識していない。

 「メンバー」と呼ぶ利用者は現在、世界で13万人。世界15カ国50以上の都市でサービスを展開している。日本は2018年初頭にサービスを提供を始める16カ国めの都市になる。メンバーは多様で、個人の起業家から中小、フォーチュン500の事業を世界展開する企業まで、様々なメンバーがいる。先月は1万9000人のメンバーが加わった。そのうち30%は大企業だ。東京で利用登録したメンバーは、他の50都市でもすぐにサービスを使えるようになる。

日本法人代表に就任するクリス・ヒル氏
日本法人代表に就任するクリス・ヒル氏
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 メンバーはより多様な、異なる空間を求めている。仕事をしやすいのはもちろん、革新性に富み、おもてなしのような雰囲気もある。メンバーはこうした空間を、柔軟に利用したいと考えている。

 当社はテクノロジーと空間を融合させることを目指している。メンバーは自らの登録したプロフィールを元に、世界中のWeWorkのサービス拠点にアクセスできるようにしている。

 日本でのサービス開始当初はインフラの整備に注力する。施設を利用するメンバーの利用状況のデータを集めて分析し、パートナーとの協業を進める。ソフトバンクをはじめとするパートナーの専門知識を使って、サービスを改良していきたい。

「サービスとしての空間」を標榜し、ITを重視している。具体的にどんなITを活用するのか。

 まずメンバー同士のコミュニティを形成、運営することが第一だ。テクノロジーと空間を使って。人々のつながり方を強化する。

 具体的には登録したメンバーが効果的に交流できるよう支援する。例えばプロフィールを基に、ビジネス機会を求めるユーザー同士や手助けを必要としている利用者同士をモバイルアプリを介してつなぐ。

 利用者の挙動も詳細に調べてデータ化する。当社のUX(ユーザー体験)チーム、R&Dチーム、データ分析、デザインなどの各チームがデータを集めており、各チームが集めたデータは一元管理する。建物やスペースを設計するときは、必ずこうしたデータを使って意思決定を下す。地域ごとの活動を分析して、ヒートマップを作る。どの施設がどれくらい使われているのか、今後どう改良すべきかを、データを基に判断する。