ソフトバンクグループの孫正義社長が率いる「10兆円ファンド」構想が動き始めた。人工知能(AI)やロボット、衛星インターネットなど、孫社長が有望とみる新興ITベンチャー企業に相次いで出資。出資するだけでなく孫社長の個性で起業家たちと人脈を築き、「同志的結合」(孫社長)を形成する。事業の共同開発や相互の技術供与を促し、緩やかな企業連合を目指す。

「情報革命は人々が想像しなかった世界に我々を導く」と語る孫社長
「情報革命は人々が想像しなかった世界に我々を導く」と語る孫社長
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 「情報革命は人々が想像しなかった世界に我々を導く。パートナーとともに、あらゆる産業の再定義を加速していく」。2017年7月20日、同社イベントに登壇した孫社長は、出資先との事業創出方針をこう話した。

 ソフトバンクの最近の出資先で目立つのがAI関連企業だ。その1社である米ブレインコーポレーションは部屋の掃除や荷物の搬入などに使う業務用ロボット向けのAIを開発している。センサーなどを通じて障害物や人間を識別し、店内や倉庫内を自動走行する。

 「当社が提供するのはサービスとしてのAI。クラウド上で動作し、様々な業務用ロボットに後から頭脳を追加できる」。創業者であるユージン・イジケビッチ会長兼CEO(最高経営責任者)はこう意気込む。企業は毎月費用を払って同社AIを利用。AIは学習結果をクラウドに蓄積し、常に最新のアルゴリズムを使うので日々賢くなる。

「安全かつ安価に今すぐ使える自動運転技術だ。人間を単純作業から開放する」(孫社長)。