太陽生命保険はIoT(インターネット・オブ・シングズ)を使った家族による見守りで認知症の予防を図る。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスのInfoDeliver(インフォデリバ)と共同開発した「認知症予防アプリ」は高齢者の歩行速度に着目した点がユニークだ。

 一般に年齢が高くなると歩行速度は徐々に低下する。歩行速度が急に大きく下がった場合、認知症の前段階である「軽度認知障害」が疑われる。両社はスマホアプリで歩行速度を見える化して、軽度認知障害を早期に発見できるようにした。

太陽生命が保険契約者向けに提供するスマホの主な機能
太陽生命が保険契約者向けに提供するスマホの主な機能
歩行速度から認知症のサインを見抜く(スマホ画像提供:太陽生命保険)
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 同アプリはサーバーと連携してGPSの測位履歴を基に歩行速度を算出する。「分速48mより遅くなると軽度認知障害のリスクが高くなる」(太陽生命の村川謙治営業企画部主幹数理役)という。

 データベースに蓄積する各年代の平均歩速を基に「歩速年齢」を算出。アプリ上に表示して、高齢者に歩行速度を意識させる動機付けに使う。「平均より○%速く歩いています」など、個々の高齢者の歩行状況に応じたメッセージを表示して、継続的な取り組みを促すようにもしている。

 家族も高齢者の日々の歩数や歩行速度などを確認できる。18時間以上動きがない場合に家族へアラートを送る機能もある。

 太陽生命はシニア向けの保険商品に強みを持ち、同アプリは保険契約者向けの付加サービスとして無料で提供している。「高齢者は認知症に漠然とした不安を持っているが、自ら率先して対策を取るのが難しい。歩行速度に着目したのは、総合的な体調が反映され、日々測定でき、さらに認知症の兆候が分かる数少ない指標だからだ」(村川主幹数理役)。

 アプリを開発したInfoDeliverは北海道伊達市と共同で、健康寿命の延長に向けた社会実験を2016年12月から実施中だ。歩行速度と医療費との相関や、運動指導の効果が歩行速度にどう表れるかなどを検証する。

 セコムも2017年7月7日からシニア世代の歩行を測り、運動を促すスマートウオッチ「セコム・マイドクターウォッチ」の提供を始めた。手軽なウォーキングの見える化によって健康維持が進みそうだ。