動画の配信やファイルのダウンロードサービスを提供するWebサイトでよく採用されているCDN(Content Delivery Network)サービス。配信データを複数のサーバーに分散しておくことで、ユーザーが快適にWebアクセスできるようにする。このサービスを、最近では大手企業だけでなく、「中小規模の企業や個人のWebサイトで採用するケースが増えている」(Jストリーム 配信事業統括本部 プロダクト企画部 エグゼクティブマネージャー 兼 事業推進部 CDNアライアンス課 エグゼクティブマネージャーの鍋島 公章氏)という声がある。

最寄りのサーバーに取りに行く

 CDNサービスは、ユーザーの近くにある配信サーバーから、利用企業のWebサーバーのファイルをダウンロードできるようにするサービスである。米アカマイ・テクノロジーズをはじめとするCDN専業事業者のほか、通信事業者、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)などのクラウドサービス事業者などが提供する。

ユーザーの近くにあるサーバーからファイルをダウンロードさせるCDNサービス
ユーザーの近くにあるサーバーからファイルをダウンロードさせるCDNサービス
Webサーバーへのアクセスを、ユーザーのアクセス元によって配信サーバーに振り分けるサービス。
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 CDNサービスの主なメリットは、(1)高速アクセスと(2)ピーク対策だ。

 一つめの高速アクセスは、ユーザーのアクセスを最寄りの配信サーバーに振り分けることで実現する。インターネットをはじめ、ネットワークの通信では必ず遅延が生じる。例えば、東京とニューヨークとの通信なら、経路によって差はあるものの、パケットの1往復に200ミリ秒以上かかる。国内でも20ミリ秒以上かかる場合がある。これを最寄りの配信サーバーにアクセスさせることで、ネットワーク遅延をなるべく小さくする。

意外と大きいネットワーク遅延
意外と大きいネットワーク遅延
Webサーバーとのパケットのやり取りには、地域によっては往復に200ミリ秒以上かかる。国内でも800km離れた東京-札幌間なら20ミリ秒を超える。やり取りするデータのサイズが大きくなると、パケットの往復回数が数千回、数万回と増えて、パフォーマンスに大きく影響する。ここに挙げた遅延時間は、通信事業者やネットワーク機器メーカーの資料、編集部での測定値から独自に算出した目安。
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