「いらっしゃいませ。本日はお振り込み8件と税金のお支払い、それからお引き出しと両替ですね。少々お待ちください」。窓口職員は顧客からQRコードの付いた伝票の束を受け取ると、普段と変わらぬ笑顔で応じた。

 とかく混み合うイメージのある銀行の窓口。特に月末や五十日(ごとおび)に重なると、顧客の待ち時間も長くなり、応対する窓口職員にも余裕がなくなることが往々にしてある。

 福岡市内に本店を置く西日本シティ銀行では、そんな厳しい窓口業務をある工夫で一変させた。入出金や振り込み、納税、両替の手続き時に窓口へ提出する伝票を、Webサイトであらかじめ作成できる「伝票作成WEBサービス」がそれだ。窓口の取引1件当たりの処理時間を4割減らし、月末に頻発していた振り込みの着金遅延も同サービスを使った振り込み処理では解消した。QRコードが窓口業務の効率化に大きく貢献したのだ。

西日本シティ銀行の「伝票作成WEBサービス」。ユーザー登録などは不要で、同行に口座を持っていない人も利用できる
西日本シティ銀行の「伝票作成WEBサービス」。ユーザー登録などは不要で、同行に口座を持っていない人も利用できる
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QRコード付き伝票を印刷し、窓口へ持ち込む

 仕組みはこうだ。同行の伝票作成WEBサービスのページで取引種別と口座番号、金額などを入力すると、QRコード付きのA4判の伝票がPDFファイルとして出力される。顧客はそれを印刷して同行の窓口へ持ち込める。引き出し用の伝票に届出印を押す点と、個人の場合は取引記録として筆跡を残すため氏名の手書きを必須としている点は引き続き顧客の手作業が残るものの、全てが手書きだった従来の伝票に比べ大幅に手間を減らせる。

 入力内容はデータファイルとして保存しておき、後日再び伝票を作成する際に呼び出すことで入力の手間を減らせるほか、取引内容が同一であれば一度作成したPDFファイルの使い回しも可能だ。

「伝票作成WEBサービス」の入力画面。摘要欄にコメントを記入すると、その内容が通帳に印字される。近年は各行とも縮小しているサービスだが、同行は同サービス限定で復活させた
「伝票作成WEBサービス」の入力画面。摘要欄にコメントを記入すると、その内容が通帳に印字される。近年は各行とも縮小しているサービスだが、同行は同サービス限定で復活させた
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