「旅行者の80%が、まずはインターネットで情報を収集している」――。2017年7月20日、「インバウンド・ジャパン2017」(主催:日経BP社)の講演で登壇したトリップアドバイザーの牧野友衛代表取締役はこのように切り出し、旅行クチコミサイトを運営する中で見えたインバウンドの現状や、旅行者が書き込むクチコミの活用について紹介した。

トリップアドバイザーの牧野友衛代表取締役
トリップアドバイザーの牧野友衛代表取締役
(撮影:清野 泰弘、以下同じ)
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 まず、牧野氏はトリップアドバイザーの成長に触れた。同サイトには700万件の宿泊施設やレストラン、観光地の情報が登録されている。それらに集まるクチコミは5億件に達し、月間平均で3.9億人のユニークユーザーを獲得しているという。牧野氏は「多くの外国人旅行者がトリップアドバイザーを見て旅行先を決めている」と話す。

 トリップアドバイザーは、スマートフォンのアプリからも利用できる。ダウンロードは4億回以上を記録し、「世界で最もダウンロードされた旅行アプリだ」(牧野氏)。事前に旅行先を検索するだけでなく、旅行中に現地の施設なども検索できる。都市別にダウンロードできるコンテンツを用意し、オフラインでもコンテンツにアクセスできる。

 旅行業界への影響は拡大している。牧野氏は研究機関であるオックスフォード・エコノミクスの2016年のレポートを引用した。2014年、トリップアドバイザーによって2200万件の旅行と3億5200万件の宿泊が生まれ、これらは約7兆2700億円の旅行支出に相当するという。

 日本語版は2008年に開始し、約70万件の国内施設を掲載している。トリップアドバイザーに集めたレストランのクチコミを「ぐるなび」に提供するなど、各所との連携も進めている。牧野氏は「旅行先としての日本への関心は高まっている」とする。海外からの日本の観光情報の閲覧数は2013年以降増加し、2015年は前年比33%増、2016年は同19%増だったという。

 続いて、牧野氏は2016年に日本を閲覧した国/地域を挙げた。上位はアメリカ、中国、台湾、香港、オーストラリア、シンガポール。「これら5カ国で海外からのセッション全体の半分以上を占めた」(牧野氏)。日本がアジアで最も閲覧される国である一方、競合はアジアの国に限らないとの見解も述べた。

 外国語のクチコミは特定の都道府県に集まる点も指摘した。外国語のクチコミの66%が東京都、京都府、大阪府、北海道、沖縄県の5つに集中しているという。特に、「沖縄県へ集まるクチコミのうち、外国語の割合は他県よりも増えている」(牧野氏)という。

 日本語と外国語のクチコミを比較すると、人気が集まる観光スポットにも違いがあったという。東京の観光地について見ると、日本語と外国語の両方で上位10位にランクインしたのは、新宿御苑と明治神宮だけだった。

 人気の理由も異なった。牧野氏は、千本鳥居で有名な京都府の伏見稲荷大社を例に示した。外国語のクチコミには「トレッキングに向いている」など、日本人にとって意外なものも多かった。「クチコミを見れば、先入観なく何が求められているか分かる」(牧野氏)。

 講演の終盤、牧野氏はトリップアドバイザーやそのクチコミを観光にどう活用すべきか述べた。「欧米の小規模な宿泊業者は、クチコミサイトを安価なマーケティング対象として重要視している」と前置きした上で、クチコミサイトを活用した施設は公式ホームページの月間クリック数が上昇している、とのデータを示した。

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