世界最大のEC(電子商取引)市場、中国。同市場の攻略には政府の政策への理解が必要だ――。中国istyle China 董事長兼総経理の吉田直史氏は2017年7月19日、「インバウンド・ジャパン 2017」(主催:日経BP社)に登壇し、中国EC市場について講演した。同社は、化粧品情報サイトを手がけるアイスタイルの中国法人だ。

中国istyle China 董事長兼総経理の吉田直史氏
中国istyle China 董事長兼総経理の吉田直史氏
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 中国のEC市場の規模は2016年には90兆円にも迫る勢いで成長してきた。吉田氏によれば「為替の影響で変動もあるが、世界最大のEC市場といえる」。日本の約5.7倍の市場規模だという。

 ECサイトを使って国境を越えた商品を取引する「越境EC」の関連ビジネスも拡大しており、参入企業は増えている。アイスタイルグループも2014年に越境ECに取り組み始めた。

 中国では2014年ごろにバブルと言われるほど越境ECのビジネスが急速に拡大したという。越境ECビジネスが拡大した一方で、2015~2016年には既存産業の一部で衰退がみられたという。「法律や税改正とともに、新興産業と既存産業の落としどころが政府に求められている」と吉田氏は話した。

中国では自社ECサイトは少ない

 吉田氏は講演の後半に、日本と中国の間にみられるEC文化の違いについて解説した。

 例えばECサイトにおける企業の出店傾向だ。日本では、自社のECサイトを中心とした販売戦略が主流だ。企業は検索ユーザーや閲覧ユーザーを自社のECサイトに誘導しようとする。一方、中国はECモールが主流だ。企業は自社サイトではなく、ECモールに出店する傾向が強い。「主要なECモールだけで市場全体の約9割を占める」(吉田氏)という。

 セールイベントも日本と中国では利用者の反応が違うという。日本のECモールでのセールイベントは中国に比べて比較的小規模だという。吉田氏は「年に数回しかない巨大なセールイベントの当日は旅行や仕事にもいかずに、ショッピングに没頭する利用者もいる」と紹介した。このほか決済方法や物流、カスタマーサポートなどにも文化の違いがみられるという。

 中国でECを展開するには文化の違いを考慮しなければならないが、中国政府の政策にも注意して対応しなければならないという。例えば2016年は税制の改正が多い1年だったという。「商品の売れ筋が大きく変わるなどの影響があった」(吉田氏)。

 吉田氏は講演の最後、中国アリババ集団の馬雲(ジャック・マー)会長が語ったエピソードを紹介した。マー会長によれば、今後オンラインとオフラインの商品取引は“融合”が進む。一方、法制度が現行のままではこうした“融合”を規制してしまうこともある。そのため今後は、政府規則が変更する可能性もあるという。

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