スマホから1日単位で加入できる損害保険、健康状態に応じて加入後も料率が変動する生命保険──。保険をITで変革する「インシュアテック」の取り組みが熱を帯び始めた。AI(人工知能)による精緻なリスク分析やIoTを活用した健康データの取得など、新技術が伝統的な業界構造に変革を迫りつつある。保険自由化から約20年、ITを軸に保険会社の新たな競争の幕が開いた。

 待ちに待った夏休み。二泊三日の旅行に出かける家族と車に乗り込んだあなたは、運転前にスマートフォンを取り出した。「そうだ、お気に入りのデジカメに保険かけとかなきゃ」。画面には買ったばかりのデジカメのほか、自宅のテレビや冷蔵庫、エアコンといった購入済みの家電が並ぶ。デジカメを選び、日数を3日間に設定すると「保険料は90円です」と表示された。金額を確認して申し込みボタンをタップすると、1分ほどでデジカメの損害保険に加入できた。「これで万が一デジカメが壊れても安心だな」――。

 あらかじめ登録した家電などをスマホで選び、1日単位で加入できる。こんな損害保険がこの8月に国内で初登場する。その名は「Warrantee Now(ワランティ・ナウ)」。ITベンチャー企業のWarranteeが、損保最大手の東京海上日動火災保険などと組んで始める新サービスだ。

図 Warranteeが提供するオンデマンド損害保険の概要
図 Warranteeが提供するオンデマンド損害保険の概要
(画像提供:Warrantee)
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 新サービスの最大の特徴は「即時性とオンデマンド性」(東京海上日動の堀内一優情報産業部NTT室課長)だ。保険をかけられるのはデジカメのほかテレビやデジタルレコーダー、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど家電全般。保険料はデジカメやデジタル家電なら1日(24時間)当たり39円から、冷蔵庫などの生活家電なら同19円からだ。

 補償内容はモノ(動産)に対する既存の動産総合保険と同様だ。ただ従来の動産総合保険は契約期間が1年など長期で、保険料も数千円を一度に支払う必要があった。新サービスは「利用者が気に入っているもの、大切にしているものに、1日から柔軟に加入できる」(Warranteeの庄野裕介社長)。

 万が一製品が故障した際は、加入者がメーカーに修理を依頼できる。修理代金はWarranteeと組む損保会社がメーカーに支払う。メーカーは宅配便などを使って利用者から商品を引き取り、修理したうえで利用者に送る。

 損保会社としては主幹事となる東京海上日動のほか、MS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下の三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険が加わる。