大手コンビニエンスストアが、ICタグ(RFID)を本格的に活用しようと動き出した。2017年4月18日、セブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、JR東日本リテールネットの5社は、経済産業省が掲げた「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」に合意したと発表した。

 コンビニで扱う全商品に、ICタグを貼り付け、レジにおける会計や、物流、商品管理などに生かすという。コンビニで扱う商品の数が年間1000億品であるという試算から、ICタグを1000億枚使用するとの宣言である。

 各社とも、ICタグをコンビニの業務に活用する検討は個別に開始している。例えば、セブン&アイ・ホールディングスは、店舗検品の省力化のためにICタグを活用する方針だ。商品を運ぶカゴ車にICタグを貼付し、物流拠点や店舗での検品時間を大幅に短縮することを目指す。2017年8月に実証実験を実施するという。

 こうした各社個別の取り組みとは別に、競合する5社がそろって「宣言」を公表するのは、異例といえる。その背景には何があるのか。

いち早く全品にICタグを貼付したローソン

 ICタグの全品貼付に最も力を入れているのは、ローソンだ。2017年2月6日から2週間、大阪府守口市にある実験店舗「ローソンパナソニック前店」で、扱う商品ほぼ全てにICタグを貼付する実験を実施した。

ローソンの実験店舗「ローソンパナソニック前店」
ローソンの実験店舗「ローソンパナソニック前店」
(出所:ローソン、以下同じ)
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 店舗に納品された商品に、手作業でICタグを貼付してから陳列。来店者が商品を専用のかご「スマートバスケット」に入れ、パナソニックが開発したセルフレジ「レジロボ」にかごを置くと、ICタグ内のデータをレジロボが無線で読み取り、精算できる仕組みを実現した。

商品一つひとつにICタグを貼付した
商品一つひとつにICタグを貼付した
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パナソニックが開発したセルフレジ「レジロボ」
パナソニックが開発したセルフレジ「レジロボ」
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 レジロボは、内部にICタグリーダーを内蔵しており、かごにどのような商品が入っているかを読み取る。どの商品を何個購入するのかを、バーコードを読み取ることなく、検知する。

 さらにそれら商品をレジ袋に自動的に入れる機構を備えるのが特徴だ。袋詰めまで、無人で行う。

レジロボは商品を自動的に袋に入れる
レジロボは商品を自動的に袋に入れる
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 ローソンの1店舗当たりの商品点数は、約3000とされる。1日3回ある入荷のタイミングでも、動員したアルバイトがICタグを貼付していった。かなりの時間がかかったという。