問題なく稼働していても褒められず、障害が発生すると叱られがちな運用業務の現場。メンバーが同じ拠点におらず、なかなか顔を合わせられないオフショア開発の現場。いずれもメンバーの心が折れやすい環境で、しかも打ち手が限られそうに思える。だが、そんな状況でもメンバーの心が折れないように工夫し、成果を上げるリーダーがいる。

「月間MVP制度」で職場に変化を起こす シーエーシー 徳岡 悠史氏

 運用の現場は一般に高い安定性が求められる。システムが安定してこそユーザーの業務が回るので当然だが、行きすぎると「マニュアル通りに業務をこなし、余計なことはしない」という姿勢に陥りかねない。こうなるとマンネリ感がチームを覆い尽くし、やる気を失ったメンバーの心が折れる。

 シーエーシーの徳岡悠史氏(クライアントビジネスカンパニー クライアントビジネス第一部 チーフプロジェクトマネジャー)は、チームがマンネリに陥らないように工夫するリーダーだ。徳岡氏らのチームのメンバーは30人弱で構成し、サービス業のあるユーザー企業の運用保守を8年にわたって担当してきた。そんなチームに加わった徳岡氏は、「楽しいサプライズを仕掛けるのが大好き」と話す。

 サプライズの一例は、チームリーダーに着任してすぐに始めた月間MVP制度である(図5)。月に1回程度の頻度で、運用業務に新しい工夫を取り入れたメンバーや、期間中に業務を頑張った若手メンバーを1人選出し、表彰する。さらに表彰状や、徳岡氏手製の副賞も毎回用意した。

図5●現場に小さな変化を起こし続ける「月間MVP制度」
図5●現場に小さな変化を起こし続ける「月間MVP制度」
シーエーシーの徳岡悠史氏の例。業務に変化がないマンネリ状態でモチベーションが低下するのを防ぐ
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 運用業務は問題なく稼働していても褒められず、障害が発生すると叱られて心が折れやすい。そこで表彰によってメンバーの活躍を称え、やり甲斐を高めている。

 それに加えて徳岡氏は、MVP制度をきっかけに小さな工夫、小さな変化を起こすことをメンバーに促している。変化を起こそうとすれば業務に対するマンネリ感もなくなる。それが心を高める効果になる。

指示ではなく、持ちかける

 さらに徳岡氏は、MVPの選出方法にも毎回変化を持たせた。ある時は徳岡氏が自らヒアリングしてメンバーを選出し、別の回はサブリーダーたちにMVP候補の選出を依頼した。リーダー自ら積極的に小さな変化を仕掛ける姿勢に、感化されるメンバーが次第に増えていった。サブリーダーの長田明子氏(クライアントビジネスカンパニー クライアントビジネス第一部)は「運用業務でチャレンジしてもいいんだと思えるようになった」と話す。他のメンバーも「こんなことをやってみたい」と自ら提案する動きが増えた。

 小さな変化を奨励する徳岡氏だが、「変化を起こしなさい」といった命令や指示は出さない。「『やってみない?』などと様子を探りながら持ちかける程度にとどめる」(徳岡氏)。命令や指示を受けたメンバーにはやらされ感が生じる。メンバーが自分で変化を起こそうと考えてこそ、心が高まる。