総務省が2017年7月4日に公表した2016年度の通信市場の検証結果(案)では、光回線の料金の低廉化が進展していない点を問題提起した。中でもNTT東西が展開する「光コラボレーションモデル」(光コラボ)は卸料金を値下げするインセンティブが働かず、低廉化を期待できない状況と結論付けた。卸料金の適正性について検証の在り方を検討することが重要としており、値下げにつながるかが注目となりそうだ。

設備競争は遅々として進まず

 総務省によると、2017年3月末の固定系ブロードバンドの契約数は前年同期比2.3%増の3869万件だった。内訳は光回線が同5.2%増の2932万件、CATVインターネットが同1.8%増の685万件、DSLが同21.6%減の251万件。光回線が全体の75.8%を占める。

固定系ブロードバンドの契約数の推移
固定系ブロードバンドの契約数の推移
出所:総務省
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 その光回線市場(小売市場)を見ると、NTT東西のシェアは68.4%。前年同期比0.6ポイント低下したものの、依然として高い。光ファイバーを自ら敷設する「自己設置型」や、NTT東西の光ファイバーを借りる「接続型」による参入は進んでおらず、設備競争はほとんど進展していないような状況だ。

光回線市場(小売市場)の契約数シェア
光回線市場(小売市場)の契約数シェア
出所:総務省
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 自己設置型はさすがに障壁が高いとしても、接続型については総務省が接続料の引き下げで参入促進を図ってきた。例えば1芯の光ファイバーを最大8ユーザーで共有する「シェアドアクセス方式」の接続料(主端末回線)は、2019年度に月2000円程度まで下がる見通し。2015年度比で3割減に相当する。

光ファイバーの接続料(シェアドアクセス方式の主端末回線)の推移
光ファイバーの接続料(シェアドアクセス方式の主端末回線)の推移
出所:総務省
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 総務省は引き続き、接続型による参入拡大に期待を寄せるが、固定インフラは設備投資の負担が重い。相当に効率良く顧客を獲得したとしても設備投資が先行し、一時的な業績の悪化は避けられない。その余裕があるプレーヤーは限られるばかりか、リスクを冒してまで投資するほどのリターンを描きにくい。設備競争の進展は今後も期待できなさそうな気配である。