総務省は2017年7月4日、2016年度の通信市場の検証結果(案)を公表した。移動系では「格安スマホ」に代表されるMVNO(仮想移動体通信事業者)が堅調に広がり、固定系ではNTTドコモとソフトバンクの光回線のシェア拡大が目立ってきた。総務省が公表したレポートはまだ意見募集のステータスではあるが、200ページ以上にわたる報告の中から注目ポイントをいち早く紹介する。今回は移動系通信市場の動向を見ていく。

MVNOは伸びの勢いが鈍化

 携帯電話市場は大手3社の「協調的寡占」とされる。端末や料金はほぼ横並び、ネットワークやサポート、サービスは差異化の余地が残るものの、乗り換えを促すほどの特長を打ち出すのは容易ではない。大手3社間の流動性は低下し、代わりに格安スマホを手掛けるMVNOの存在感が高まってきた。

 総務省によると、2017年3月末時点のMVNOの契約数は前年同期比25.0%増の1586万件。全体の契約数(1億6792万件、グループ内取引調整後)に占める比率は同1.6ポイント増の9.4%に拡大した。これらの数値には通信モジュールなどの契約数も含まれ、格安スマホに相当する「SIMカード型」は同48.6%増の891万件(契約数が3万件以上のMVNOを対象とした集計)。全体の契約数に占める比率は同1.9ポイント増の5.9%となっている。

移動系通信の全体の契約数に占めるMVNOの比率
移動系通信の全体の契約数に占めるMVNOの比率
出所:総務省
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 2017年3月末時点のMVNOの事業者数は684者。前年同期から132者も増加し、市場規模に比べて明らかに供給過多の状態だ。契約数が3万件以上のMVNOは59者と全体の8.6%にとどまり、業界関係者の間では「そろそろ淘汰が始まるのではないか」との声もある。

MVNOの事業者数の推移
MVNOの事業者数の推移
出所:総務省
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 SIMカード型の事業者別シェアはインターネットイニシアティブ(IIJ)が14.8%で1位だった。総務省は当初、事業者別シェアを非公表としていたが、開示の許可を得たMVNOについてはシェアを公表しており、ほかはNTTコミュニケーションズが12.9%、ケイ・オプティコムが7.6%、ソニーネットワークコミュニケーションズが5.5%となっている。