「スポーツではただ練習を繰り返すだけでなく、客観的に分析するべきだ」。ハンマー投げで有名な室伏広治氏は2017年7月7日、「IT Japan 2017」(日経BP社主催)の特別講演でこう訴えた。題目は「超える力」。

東京医科歯科大学 教授 スポーツサイエンス機構 スポーツサイエンスセンター長 室伏広治氏
東京医科歯科大学 教授 スポーツサイエンス機構 スポーツサイエンスセンター長 室伏広治氏
(撮影:井上 裕康、以下同じ)
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 室伏氏はハンマー投げ選手として2000年から2012年までオリンピックに連続出場した。2004年アテネ大会で金メダル、2012年ロンドン大会では銅メダルを獲得。2017年7月現在、東京医科歯科大学教授としてスポーツサイエンス機構 スポーツサイエンスセンター長を務めている。

 講演の冒頭、室伏氏は2016年のリオ大会を振り返った。同大会で日本は合計41個のメダルを獲得。内訳は金メダルが12個、銀が8個、銅が21個である。パラリンピックでは銀10個、銅14個で合計24個のメダルを獲得した。

 「それでは2020年の東京大会で期待されるメダル数は何個でしょうか」。室伏氏は来場者に問い掛けた。同氏によれば「(日本が)3位以内に入るには、金メダルを22個~33個は獲得しなければならない」。リオ大会での金メダル獲得数は12個で、東京大会で3位以内に入るには獲得数を大幅に増やさなければならないと説明した。

 室伏氏によれば「リオ大会では成績が優秀なだけでは勝てなかった」という。食事や言葉などが違う国では日常と違うストレスがあり、それに対抗する「たくましさ」が必要だったと指摘。「リオ五輪はたくましさが試された大会だといえる」(室伏氏)。

 室伏氏も10代のころ、練習のために海外で武者修行した。例えば真冬のロシアでマイナス10度~20度の気温でも練習。過酷な環境で練習すると、当たり前の日常が恵まれた環境だと気付くという。こうした経験を室伏氏は「たくましさを身に付けるには必要だった」と振り返る。