NTTデータの代表取締役社長である岩本敏男氏は2017年7月7日、「IT Japan 2017」(日経BP社主催)に登壇。「デジタル時代に求められる経営の着想」と題した講演で「デジタル時代に起こるインパクトは、恐竜時代絶滅を引き起こした隕石衝突のようなもの」と、これから起こるであろう社会の変化を表現した。

NTTデータ 代表取締役社長 岩本 敏男氏
NTTデータ 代表取締役社長 岩本 敏男氏
(撮影:井上 裕康、以下同じ)
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 「デジタル時代では隕石の代わりにデータの大爆発が世界を一変させる」と岩本氏は語る。「膨大なデータから何を見いだすか」と岩本氏はデジタル時代の課題を訴えた。

ビッグデータを3階層モデルで理解する

 膨大なデータを把握するには「データ、情報、インテリジェンスという3階層モデルで考えると分かりやすい」と岩本氏は説明した。第1階層は「データ」で、世の中で起こる膨大な事実を指す。データはフィルターを通すと第2階層の「情報」になる。情報にすることで、データに意味を持たせ、分析や評価の対象となる。さらにフィルターを通すと、情報は第3階層の「インテリジェンス」になる。

 「インテリジェンスは、意思決定をする源泉となるもの。データからインテリジェンスを導き出すことが重要」と岩本氏は強調し、戦国時代に今川義元を織田信長が破った桶狭間の戦いを例に挙げた。

 例えばデータは、戦場で起こる様々な事象だ。桶狭間の戦いでは、偵察部隊の斥候(せっこう)と呼ばれる兵によって情報が織田信長の元に集まった。そして今川義元が主力部隊から離れて桶狭間で休憩していることを知り、インテリジェンスに基づいて奇襲をかけたという。

 続いて岩本氏は、情報の3階層モデルを企業のM&Aで説明した。データは企業活動である。情報は財務や成長率、シェア、保有顧客層などだ。そしてインテリジェンスはM&Aの判断で重視される材料となる。「最終的に判断するのは、取締役会議に参加する一人ひとり。個々に判断が異なるが、取締役の頭脳で判断するので、同じような結果になるとは限らない」(岩本氏)。

 岩本氏は次に、この3階層モデルにはテクノロジーが関与し、「データを情報に変えるフィルターはIoTに、インテリジェンスに変えるフィルターはAIになる」と指摘した。コンピュータが自律的に情報を集め判断する例として、金融のアルゴリズムトレードがあるという。取引にかかわる情報をコンピュータが集め、判断し、トレードする。自動車の自動運転においても、IoTやAIは不可欠だとした。