「イノベーションを果たすには、強い人脈と弱い人脈の両方が必要だ」――。2017年7月7日、「IT Japan 2017」(日経BP社主催)の特別講演に登壇した早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール 准教授の入山章栄氏はこう述べ、日本企業のイノベーションに必要な経営学的視点について語った。

早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール 准教授 入山 章栄氏
早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール 准教授 入山 章栄氏
(撮影:井上 裕康、以下同じ)
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 入山氏は冒頭で、「イノベーションに関する理論は、その前提に認知科学を多用している。人間や組織がどのように行動するのか、分析する必要がある」と述べ、経営学の状況を紹介。その後、イノベーションは既存知識の組み合わせから生まれると紹介したうえで、「人は目の前にある選択肢を組み合わせがちだ」(入山氏)と強調した。

 さらに、長い間一つの組織にいる人は視野が狭くなり、新しい「知と知の組み合わせ」を生み出せなくなるとし、その理由を「アイデアの組み合わせを出し切ってしまうからだ」とした。ある分野でイノベーションを果たすには、できるだけ遠い分野から知を組み合わせる必要があるという。

 入山氏は「知の探索からイノベーションが始まる」と断言する。異分野の知を組み合わせた企業として、TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブを例に挙げた。「TSUTAYAのレンタル事業は、創業者の増田宗昭氏が消費者金融のビジネスに気づきを得て始めた」という。

 一方で、異分野の組み合わせは多くの失敗も生むと指摘。入山氏は「限りある予算のなか、企業は既存事業で収益を上げたがるもの」と述べ、日本企業が立ち上げる「新規事業開発部」の陥りがちな状況にも触れた。「初めの1、2年目は社内からの期待は高いが、3年も経つと成果の割に予算が多いと言われてしまう」という。

 このような状況に対し、どのように知の探索をするべきか。入山氏は続いて、三つの段階で取り組むべきだと強調した。