「新しいビジネスを作り出すデジタル変革と、これを支えるITインフラ技術の変革、この二つの変革が必要だ」――。EMCジャパンの大塚俊彦社長は2017年7月7日、「IT Japan 2017」(日経BP社主催)で講演し、デジタル変革とITインフラ変革の重要性を訴えた。

EMCジャパンの大塚俊彦社長
EMCジャパンの大塚俊彦社長
(撮影:井上 裕康、以下同じ)
[画像のクリックで拡大表示]

 冒頭のイントロダクションビデオでは、ITを活用したデジタル変革の事例として、インドの乳製品製造業であるチターレ(Chitale)を紹介。乳牛にICタグを付け、クラウドでデータを収集・分析して乳牛ごとに最適な飼育方法をタイムリーに提供することで、小規模農家を束ねたエコシステムを形成しているとした。

 EMCジャパンは四つのトランスフォーメーション(変革)によってユーザー企業のビジネス変革を支えているという。デジタル変革、IT変革、ワークフォース変革、セキュリティ変革である。講演ではこのうち、デジタル変革とそのイネーブラー(後押し役)でもあるIT変革について説明した。

 「2017年はビジネス変革の中核として、デジタル変革の実装が初まる」――。大塚社長は現状をこう分析した。デジタル変革とはSoE(システム・オブ・エンゲージメント)やSoI(システム・オブ・インサイト)、さらにアジャイル開発など、ビジネス戦略のためのIT活用を指している。デジタル変革によってサービスを市場に投入するスピードが高まるなど、俊敏性が生まれるとした。

デジタル変革への真剣度が足りない

 ただし、デジタル変革に対してユーザー企業はまだ真剣度が足りないと大塚社長は指摘。16カ国4000社へのアンケート調査で分かったデジタル変革への取り組み状況は、「検討前」(15%)、「検討段階」(32%)、「評価段階」(34%)、「実装段階」(14%)、「運用段階」(5%)だった。

 「デジタル変革が実際に運用段階にあるユーザー企業は全体の5%しかいない。全体の約8割はいまだに検討前や検討段階、せいぜい評価段階にとどまっている。これをいかに実装や運用へと導くかが重要だ」(大塚社長)。

 デジタル変革の推進を阻害する要因を挙げてもらったところ、「経営幹部の指示・支援不足」(31%)、「社内のスキル不足」(29%)、「人的・物的資源不足」(28%)、「不十分なテクノロジー適応スピード」(28%)、「セキュリティの不安」(23%)となったという。

 大塚社長はデジタル変革を推進するための重点領域を三つ挙げる。それぞれに対して取り組んでいる企業の割合は重点領域ごとに、「総合的なテクノロジー戦略の策定」(グローバル平均は73%、日本は62%)、「社内ソフトウエア開発能力の強化」(平均は72%、日本は51%)、「インフラとデジタルスキルへの積極的な投資」(平均は66%、日本は43%)である。

既存の大手企業はソフトウエア会社に転換せよ

 「デジタル変革の先進企業は新たな市場を作り出し、社会に劇的な変化をもたらしている」。大塚社長はこう指摘し、そうした企業は既存の大手企業を大きく上回る期待値を作り出しているとした。

 例えば、動画配信の米ネットフリックス(Netflix)は、1日に4000億件以上の再生に関する操作イベントを取得し、これに合わせてユーザーにレコメンド(推奨)を提示している。配車サービスの米ウーバーテクノロジーズ(Uber Technologies)は走行情報を集めて配車計画に活用し、民泊サービスの米エアビーアンドビー(Airbnb)は50億件以上のデータを集めて価格設定に活用していると紹介した。