ハードウエアとソフトウエアの進化によって、その場で映像を作り出す「リアルタイムCG」が可能になった。「リアルタイムCGを使うと、高度な映像表現が可能となる。優れた映像を作り出す技術で世界に感動を与えていきたいと考えている」。シリコンスタジオ代表取締役社長 寺田 健彦氏は2017年7月6日、「IT Japan 2017」(日経BP社主催)の講演「最新デジタルビジネスの現状と適用」の冒頭、こう語った。

シリコンスタジオ 代表取締役社長 寺田健彦氏
シリコンスタジオ 代表取締役社長 寺田健彦氏
(撮影:井上 裕康、以下同じ)
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 寺田氏は、コンピュータの演算処理能力の進化に触れ「25年間で50万倍になっている。さらに今後10年で演算速度がさらに1000倍速くなるという予測が出ている」と指摘した。例えば、今、一般的に使われているスマートフォンには、4つのCPUが入っているが「CPUの動作周波数も2GHzほどで、ひと昔前のスーパーコンピュータを持ち歩いているような状況となっている」(寺田氏)という。さらに、「このような技術革新が起こるのは、コンピュータの世界だけだと思われる」と語った。

 ハードに合わせて、ソフトも劇的に発達している。その中で注目される分野には「AI(思考)、CV(コンピュータビジョン=画像認識)、CG(生成)の3つがある」(寺田氏)。この3つの進化により、今後のビジネスが大きく変化するというのだ。

 AIでは、ディープラーニングの手法が加わったことで、さらなる進化を遂げている。AIは人間が作り出したものである。寺田氏は、「これまでは人間がコンピュータにものを教えていた。これからは、逆に人間がコンピュータから教わる世界になると思っている」と、自らの考えを示した。

 AIは、既に様々なサービスや製品に導入されているが、同様にCVもディープラーニングの導入で画像認識精度が劇的に進化しているという。「例えば、Google Lensでは、花の画像からその花の名前を検索できる。また、レストランの店頭でスマホをかざすだけで、その店の情報が得られる。このような技術は、これまで文字のキーワードを『買って』いたビジネスを、『画像を買う』広告モデルへと変える可能性がある」(寺田氏)と指摘した。

 一方、CGでもリアルタイムの画像生成技術が浸透すれば、「映像の作り方が大きく変わる」と述べた。

表示デバイスの進化が、新しいビジネスの可能性を開く

 寺田氏は、デジタル技術の革新がさらに豊かな映像表現を実現している事例として、ネット配信での動画視聴について触れた。「4K解像度の動画が手軽に楽しめるようになり、さらには8Kのディスプレーも開発され、驚くほどリアルな映像が楽しめる環境が整った」と現状を説明。さらに、「プロジェクターも高輝度化し、プロジェクションマッピングに代表される新しい映像の楽しみ方が出てきている。VRやAR、MRを楽しむヘッドマウントディスプレーも出荷台数を伸ばしている」と紹介した。