「当社が採用した新卒8人のうち、7人は外国籍だ」ーー。2017年7月5日、「IT Japan 2017」(日経BP社主催)で登壇したHDEの小椋一宏代表取締役社長は、同社の人材獲得がグローバルに展開している現状を明かした。

HDEの小椋一宏代表取締役社長
HDEの小椋一宏代表取締役社長
(撮影:井上 裕康、以下同じ)
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 HDEは、クラウドサービスを利用する企業向けにセキュリティを強化する製品やサービスを提供する。例えば「HDE One」は、「Office 365」や「G Suite」、「Salesforce」などを利用する企業が、不正利用や情報漏洩の対策を講じるのに役立つサービスだ。「2011年に提供を開始し、2017年6月末現在で、ユーザー数は約260万人に成長している」(小椋社長)という。

 同社は1996年に創業し、Linuxサーバーを管理するソフトウエアなどを販売してきた。転機となったのは、2011年の東日本大震災。多くのIT企業がオンプレミスからクラウドへ移行するなか、「HDEもクラウドへの移行を決意した。そのなかで得た知見を、HDE Oneの開発に生かした」(小椋社長)。

 HDE Oneの利用拡大に伴って、HDEは人材採用を活発化した。しかし、「必要なIT人材の確保はなかなか進まなかった」(小椋社長)。そこで、国内に留まらず海外でも採用を開始。現在は25人の外国人社員が在籍し、HDE全社員の約2割を占めるという。

 小椋社長は、海外からの採用に当たって、まずはアジア諸国の大学を訪問した。ビラ配りのため、浴衣を着て国立台湾大学の就職イベントに参加したこともあったという。他にも、インドネシアやベトナム、マレーシア、シンガポールなどにも出向いた。「そこで分かったのは、アニメや漫画をはじめ、アジアの若者が抱く日本への関心の大きさだった」(小椋社長)。

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 そこで、6週間の就業ができるインターンシップを企画した。日本語能力を問わない条件にしたところ、各国から応募が殺到。ネット上でエンジニアの選抜を設けた。この「Admission Challenge」は通過率10%の難関だ。87カ国から応募があり、受け入れはイギリスや台湾、マケドニアなど18カ国から実施している。

 選ばれたインターン生は、クラウドサービスやIoTサービスの構築に挑戦する。社員への採用にもつながっている。小椋社長は「必要から決めた海外からの人材採用だったが、うれしい副作用もあった」と話す。それは、社内の国際交流が進み多様性が広がっていることだ。小椋氏はその取り組みの例として、オフィスにムスリムの礼拝室を設けていることを挙げた。

 外国人のインターン生や社員が増えたことで、海外進出も一気に具体化した。HDE Oneは30カ国以上で利用されている。2016年10月からは、社内の公用語を英語にした。従業員の英語力を向上するため、オンライン英会話の受講やセブ島への語学留学も、会社が支援する。

 小椋社長は、多様性を受け入れることで企業は変化に強くなれると強調する。「労働者が減るこの時代、空気を読まずに『NO』と言える社内の雰囲気が大切だ。なぜなら、NOを言うことで本質に早くたどり着けるからだ。似た人が集まると『NO』と言い出すのは難しいが、全員が異なると一致点に目が向きやすい」(小椋氏)。