「VR(バーチャルリアリティー、仮想現実)販促でマンションの成約率が10ポイント上がった。導入効果は小さくない」。大和ハウス工業の西綾子マンション事業推進部販売推進部販売支援グループ主任は満足げに話す。「とにかくお客様の反応が違う。手応えを感じる」(西主任)。
VRによる販促が効果を上げているのが、同社が手掛ける沖縄県豊見城市の分譲マンションだ。全2棟204戸のうち、2016年9月から始まった2棟目の販売でVRを使ったところ、成約率(歩留まり)が1棟目の約25%から35%程度まで高まったという。
同社は比較的安価な地方のマンションを都市部の在住者に売る戦略を重視している。都市部のマンションは価格が高騰し売れにくくなっているためだ。売る場所と商品の場所が遠く離れるため、購入希望者にいかに遠方のマンションで生活するイメージを持ってもらうかが課題だった。
今回も沖縄マンションの販売拠点は東京の浜松町にある。現地までは直線距離で実に約1600キロメートル離れている。
1棟目の販売では現地での生活をイメージしてもらえるよう、購入希望者にiPadで平面動画を見てもらっていた。だが、最終の意思決定をするために現地まで行った購入希望者からは「動画からイメージしたものと違う」との声も。「見学したのに成約に至らないこともあった」(同)。
平面動画では生活のイメージを伝えきれない。ましてや2棟目は1棟目より注目度が下がる。新たな販売戦術を打ち出そうと検討するなか、西主任はVRに着目した。