「もう少し上を見て」「フタを外して写真を撮って」――。大雨で被災した建物を訪れる若手調査員がかけている一風変わったメガネ「スマートグラス」の小型画面に、指示内容や様々な画像が次々に表示される。指示や画像の送り手はオフィスにいるベテランの調査員。机の上のPCには若手調査員が見ている景色が映る。スマートグラスのカメラから携帯電話網を介して届いたものだ。

 SOMPOホールディングス(HD)傘下で住宅リフォーム事業を担うフレッシュハウスは、損害保険ジャパン日本興亜と連携してスマートグラスとARを使った業務改善を進めている。フレッシュハウスの調査員は被災家屋に出向いて被害状況を調べ、保険金支払いの前提になる見積書を作る。一連の作業にかかる時間を短縮し、補修工事の着手を早めることで顧客満足度を高めるのが狙いだ。

SOMPOホールディングスの現地調査の流れ
SOMPOホールディングスの現地調査の流れ
スマートグラスで離れた場所から指示を受ける(写真:SOMPOホールディングス)
[画像のクリックで拡大表示]

 フレッシュハウス経営企画部の佐山幸康部長は「保険査定に詳しくない若手調査員がベテランのサポートを受けて安心して調査に従事できる」とメリットを語る。

 火災保険の損害保険金の支払い対象となる事故で多いのは、火事の被害よりも、大雨や台風などによる水漏れ・破損による被害という。補修にかかる平均工事単価は約30万円程度とそれほど高額ではないが件数は多い。

 保険金を支払うには現地訪問調査による見積もりが必要だ。「こういう事象で、こんな証拠写真があれば支払い対象になる」といった保険知識が調査員には求められる。

 ところが、これまでは訪問調査して作成した見積書の約8割に何らかの不備があり、手戻りが問題になっていた。