このアート、みなさんは何に見えますか。複雑に絡み合う、パソコン内部の配線コードの束のように見えますし、地下鉄の路線図にも似ています。
実は、ある小売業の顧客が自社のEC(電子商取引)サイトである「オンライン」と、実店舗の間をどのような経路で行き来したのかを可視化したものなのです。
顧客が商品などに関心を持ってどのような段階を経て購買に至ったかを可視化したものを、「旅程(ジャーニー)」に例えて、「カスタマージャーニー」と呼びます。このアートはいわば、オンラインと店舗間のカスタマージャーニーを可視化したものなのです。
タイトルは、「顧客チャネルのザッピング」。このアートで表現されたカスタマージャーニーを見ると、オンラインや店舗間をしきりに切り替えながら商品を購入するかどうかを検討していることが分かりました。その動きが、リモコンでテレビのチャンネルをしきりに切り替えるテレビの視聴の仕方である「ザッピング」に似ていることから、この名がつきました。
実店舗で商品を買う前後の顧客の動きを可視化
このアートは、顧客が「オンラインなどの販売チャネルをどうたどって実店舗での購入に至ったのか」「実店舗で購入後、どのような行動をしているのか」を、ある小売業が持つ顧客の行動データを基に示したものです。
アートの左から右へと時系列に、顧客の行動を表現しています。中央に見える、レジのイラストを含む赤いアイコンは、実店舗で商品を購入したことを意味しています。つまりこの赤いアイコンの左側は、商品購入前の顧客の行動を示しており、赤いアイコンの右側は、購入後の行動を示しているのです。
それではアートの読み方です。青やオレンジ、ライトグリーンの帯は、顧客の行動を示しています。「商品を検索して詳細を閲覧する」「カートに入れる」といった、主にオンラインでの行動を示しています。
その帯の間を結んでいる線が、顧客がたどった経路を表現しています。その経路をたどった顧客の数が多いと、帯の間をつなぐ線が太くなるようビジュアライズしています。
アートのうち左上に見える、青のノード(帯)の集まりは、オンラインで商品を閲覧・検索・参照してカートには入れたものの、購入に至らなかった顧客の行動を示しています。これらの顧客は、オンラインショッピングで購入しなかった商品を、中央の赤いアイコンで表現されている実店舗で購入していることが分かりました。
アート内の左下に集まるオレンジの帯は、オンラインで購入に至った経路を示しています。右側に見える、ライトグリーンの帯は、店舗に来店した後、オンラインに戻って来て、検索や閲覧などを続ける多くの顧客の動きを表現しています。左右にいくつか見えるダーク・グリーンの帯は、オンラインで定期的にアクセスしている顧客です。おそらくはこの小売業のオンラインを「お気に入り」のWebページなどに設定しているのでしょう。
このアートは、ポイントカードやクレジットカードの利用データから、オンラインショッピングと来店客の多い実店舗の二つの販売チャネルに着目し、顧客一人ひとりの購買行動を分析。各顧客の購買特性を分類したうえで、経路図で表現しました。
このアートを作ることで、「オンラインで商品の特徴や価格などをチェックした後、店舗で購入する行動パターンをとる顧客がどのくらいいるのか」が把握できるようになりました。