Windows 10 64ビット版のユーザーであれば、使い始めるだけなら数クリックで「Linuxユーザー」になれる。米マイクロソフトが組み込んだWindows版Linux、「Windows Subsystem for Linux」で、Windows上のアプリケーションのようにLinux OSを使えるからだ。
どの程度の手間で、WindowsユーザーがLinuxに入門できるのか。実際に試してみよう。
Windows Subsystem for Linux(WSL)は、米マイクロソフトが2016年8月の大規模更新「Windows 10 Anniversary Update」で標準搭載させたLinux互換環境だ。WindowsカーネルをLinuxカーネルのように装う軽量な変換機能で、Linuxディストリビューション▼のUbuntuが動く。
ハードウエアの抽象化やプログラムの管理を担う「Linuxカーネル」(カーネルは核の意味)に、起動時の初期化プログラムや各種アプリケーションを加えて一般的なOSとして使えるようにしたもの。
サーバーOSとして広く使われるLinux環境をWindowsで動かせるので、開発者がテスト環境を構築しやすくなり、Linux主体の仮想OS「コンテナ」を扱えるようにもなる。コンテナは仮想化の対象がOSであるため、仮想マシンを使わずに動かすにはLinuxカーネルが必要だ。
開発者向けとされているが、そうでないユーザーにとってもLinuxを手軽に使えるようになる。2017年秋を予定する「Fall Creators Update」では、これまで必要だった「開発者モード」への切り替えが不要になる。ビルド番号16215以降の開発版には実装済みだ。
開発者モードを必要とするのはWindowsストア外のアプリケーションを導入させるための措置だが、Fall Creators Updateでは、WindowsストアにLinuxディストリビューションが入る。Ubuntuのほか、「openSUSE」と「Fedora」を提供する予定だ。openSUSEは、独SUSEの商用Linuxディストリビューション「SUSE Linux Enterprise Server」のコミュニティー版。Fedoraは、米レッドハットの「Red Hat Enterprise Linux」の先行開発版だ。
企業向けの3大Linuxが、Windowsストアから導入できるわけだ。
Fall Creators Updateに向けて開発が進む2017年6月30日時点の最新版では、これまで標準だったコマンドでUbuntuをインストールしようとすると、Windowsストアからのダウンロードを促される。もっともWindowsストアにUbuntuなどはまだ登録されていないため、今のところコマンドでの導入が必要だ。